ABOUT Designer's News
【ジュエリーデザイナーという仕事】
このDesigners NEWSでは、いつか自分のブランドを持って好きな事を仕事にしていきたいと、LaVagueジュエリースクールで制作技法・ブランド運営のノウハウを学び、夢の一歩目を踏み出した方達をご紹介しています。
どんなきっかけで、どんな想いでジュエリーを作っていくのか。この仕事を生業としていく一人一人の物語を皆さんにお伺いしました。
今回はジュエリーデザイナーとして独立したSHIIHAデザイナーの清水悠花さんにお話しを伺いました。
PICK UP BRAND
【SHIIHA(シイハ)】
今回、roomsが2年ぶりに代々木体育館に戻ってきました。
数多くの今活躍しているブランドを輩出した日本の大きなBtoB向けの合同展示販売会であるrooms
今回40回目の開催という区切りと共に、代々木体育館というホームへの帰還は、毎年roomsの開催を楽しみにしている私にとっても熱いものがあり、また出展側も運営側も今回は特別な気持ちを感じ、数多くのroomsから羽ばたいていった有名ブランド達が参加していて、とても豪華なラインナップとなっていました。
そんな、輝かしい活躍を見せているブランド達が並ぶ中、遜色なく肩を並べていた新ブランド【SHIIHA(シイハ)】
2019年のジュエリー専門の合同展示販売会であるDesigner’s FESTAにて、初出展ながら100以上の参加ブランドの中から、一般来場者による最も素敵だと思うブランドへの投票で堂々の2位を獲得。
最初から洗練されたコレクションを揃え、鮮烈なデビューを飾ったSHIIHA
今回は、デザイナーの清水悠花さんにSHIIHA立ち上げまでのお話を伺わせていただきました。
SHIIHA interview
それではまず、清水さんがご自身でブランドを立ち上げるまでの経緯を教えていただけますか?
また、ジュエリーを選ばれた理由を教えてください。
こちらこそよろしくお願いいたします。
小さい頃から何でもつくることが好きで、服や小物の物作りに留まらず作曲や劇、ダンス、漫画、とにかく何でも手を出しました。
中学の頃に、アパレルデザイナーになりたいと思いそれからはファッションに傾倒していきましたが、専門学生時代に服に合わせるジュエリーの輝きの強さや奥深さに魅了されてジュエリーデザイナーになろうと決めました。
目標はマイブランドの設立でしたが、まずは世の中を見て見たいと思ったのでジュエリー企業に就職し、同時にラヴァーグに入学しました。
就活の面接で、マイブランドを持ちたいので勉強させてほしいと社長に話し雇ってもらったので、いつか辞めると分かって雇ってくれた社長にとても感謝しています。
「ジュエリー業界を盛り上げたい」という思いから私に希望を見出してくださったようです。その精神に共感し、私もブランド活動の最終目標はそこにあります。
長くなったので端折りますが、その後結婚、退職、出産を経てブランド立ち上げにいたります。
ラヴァーグに通うまではパーツアクセサリーを趣味レベルで。
就職とラヴァーグがほぼ同時スタートだったので、ラヴァーグで学んだことがそのまま仕事に活き、ラヴァーグで基礎を学び、会社で応用ができる最強の環境だったと今になれば思います。
私は商品製作はせず、デザイン・原型製作(・時にサンプル製作)のみのスタイルです。商品展開の幅を広げるためにアナログとデジタルどちらも身につけたかったので受講しました。
結果、どちらも違う手法で原型製作できるのでとても助かっています。私のデザインはサイズがコンマレベルで精密に調整が必要なものもあり、CADの正確性は非常に合っています。ただCADは造形費がかかるのでCADではなくてもいいものは彫金で製作したり、最近は独学でWAX製作をしたりしてデザインに合う手法を考えながら制作しています。ニュアンスを出すにはWAXは素晴らしい手法ですね!
【SHIIHAのこだわり】
まだまだ手が離せない時期の子育てと、ジュエリーブランド立ち上げと大忙しかと思います。
子育てをしながら自分のブランドをやっていく中で、どのように進めていっているのですか?
ブランドを立ち上げる前に出産後、ワーカホリックなのでとにかく早く仕事をしたくて、フリーランスでWEB系の仕事を始め、子供は保育園に入りました。
その後ブランド立ち上げに向かったので、現在はフリーランスでWEBの仕事とジュエリーブランド運営の二足のわらじです。そのため、どちらの仕事も家事も育児もあって、何が大変かも分からないくらい色々なことに追われながら、正直根性で頑張っています。
ただ、性格的に仕事も子育ても特に辛いと思うこともなく気楽にやっています。
子供を寝かしつけてからが勝負の時間なので、毎日早く寝ろ〜〜って念じながら子供とわちゃわちゃしてます。笑
フリーランスは、「やりたいことをやる」という良くも悪くも自己責任な働き方なので自分のペースを作れる人には向いていると思います。
旦那も転勤族なので、いつかは自分のブランドをと思っていたのでちょうどよかったです。
そんな忙しない毎日の中なのに、SHIIHAのコレクションのデザイン性の高さや機能美、また素材の着眼点の面白さから、日本人に留まらず世界中の人から愛されそうなラインナップだと感じています。
機能美をお褒めいただきとても嬉しいです。デザインよりこだわりが強い部分です。
ファーストインプレッションのときめきや愛用していくうちに芽生える愛着などジュエリーへの心の寄り添いや着用した時の肌への馴染みを大切にしたいと思っています。ジュエリーと刻むを時を楽しんでいただきたいという思いからです。
パールシリーズは業者泣かせシリーズとも言います。まず参考例がほぼないので試作を重ねて製品レベルに持っていくしかありませんでした。
PatternPearlはパールの選定が難しく、美しい断面がどのようなパールに多いのか確率的に探るしかありません。さらにカットも難しく何社か依頼してようやく今の業者にたどり着きました。カットしても製品レベルではないものも多くかなりリスキーなシリーズです。
BycolorやPearl×Pearl(DiaやPearlを挟んだやつ)はダイヤサイズが0.1mmも誤差が出せないのでパール業者さんを毎回悩ませています。
それらの苦労や思い入れがあるからか、お客様へご案内するときは力が入っているかもしれません。笑
実際にお披露目をしてみて、客様の反応はどうでしたか?
先日のrooms40では、「誕生石のパールを持ちたいけど過去になくしたことからトラウマになっている」というお客様が最終的にPattern Pearlのリングをお持ち帰りくださいました。
一点ものルースのため一期一会を大切にしてくださったのですが、「本当は今日来るつもりはなかったこの展示会で、このリングに会えて運命を感じた。このリングが幸運を運んでくれそう」とリングに思いを込めてくださったことが印象的でした。
〔心と体にフィットする〕というのはまさにこういうことで、一つのジュエリーとの出会いからお客様一人一人のストーリーを刻んでいただけたら嬉しいです。
SHIIHAのコレクションラインは、パッと見て目を引くし、どうなっているんだろう?身に着けてみたら?と次から次へ興味を掻き立てます。
数多くの輝かしい実績を持っている出展ブランド達の中でも、本当にいい意味で目立っていました。
金価格の高騰や職人の後継者問題など表の輝かしさに反してバックグラウンドの問題をよく見聞きします。
また、ハンドメイドの市場拡大で誰でも簡単にブランドを持つことができるため、一歩抜きん出ることが難しい時代だと感じています。
そこを突破するには色々な壁がありますが、「公正な価格で取引すること」「商品に付加価値を見出すこと」が大切ではないかと思っています。
迷っているならやる、やりながら考える、失敗を利用する
私が何より大事にしているのは「時間」です。今は特に時間が足りないので、有効利用することばかり考えて行動しています。
とにかくやりたいことが多いので、私に迷っている時間はないんです。
老後はクレープ屋さんをやると決めているので大器晩成とかいう余裕もありません。笑
まずラヴァーグに通えている時点で、環境としては十分だと思います。デザフェスという一歩踏み出すにはとても良い舞台もあるので何をしたら良いか迷っているのであれば、ラヴァーグを最大限に活用することから始めてみたら良いと思います。
人生一度きりなので、やらぬ後悔よりやる後悔!やってみたら案外なんとかなるもんだと思います。
きっと、色んな方達の背中を押すきっかけとなると思います。
個人的にSHIIHAは今後の活躍がものすごく楽しみにしている注目ブランドなので、
陰ながら応援しております。
【夢は現実にするもの】 ー編集後記ー
日本人女性の人生の中で「専業主婦」という選択肢が薄れてきたのは、果たしていつ頃からなのでしょう。
今では、多くの女性たちが働きながら子育てと主婦業をこなすというのが当たり前になりつつあります。
独身の私にとっては、もうただただ世のお母さんたちは本当に大変だし、両立出来ていることを心から尊敬しています。
きっと、色々なことを我慢して過ごしているのだろうと思っていたのですが、好きなこと・やりたい仕事に向き合ってるママたちは、「子育てと仕事がある今、ものすごくバランスが良い。今の自分にとって、どちらも欠けてはいけない存在になっている」と話してくれる人が多く感じます。
今回、取材に応じてくれたSHIIHAの清水さんもその一人。
ジュエリー以外にもWEB関係の別のお仕事もご自身で立ち上げていることを知り、2つのお仕事+子育て+家事と、めまぐるしい毎日を送りながら「子育ても仕事も楽しめている」と。
清水さんは、取材を通して今までの経歴を聞く限り、逆算をしながら自分の人生を進めていくことが出来る賢い女性だと思います。
自分で自分の声をちゃんと聴きながら、今必要なことや軌道修正をきっちり進めていける強さがあると感じています。
初めてSHIIHAの商品を展示会で見た時、周りの雑音が少しずつボリュームダウンしていくような錯覚がありました。
デザイナーの清水さんが一つ一つの商品説明をしてくれた内容を、しっかり聞き逃さないようにしたい。そう感じたことを忘れません。
どの商品にも、それぞれの個性や主張があり、ただデザインが良いというだけではなく、説明を聞く中で「そこまで考えられているんだ」と機能性から出てくる造形美にただただ驚くばかり。遊び心を取り入れながらも、とことん無駄を削ぎ落しているのです。
取材の後、一体、どうやってここまで考え切った商品を作る時間を捻出しているのだろう。というのが素直な感想でした。
きっと日常のドタバタな大変な中でも、自分で上手に調整して、楽しいと感じられる時間があることに対しては、寝る時間を削ってもやりたいという原動力になるのだと思います。
ジュエリーは、人生になくても困るものではないかもしれません。だけど、誰かの人生の思い出や節目、気持ちや約束を形にして大切に身につけられていくものです。
誰かの一生ものを手掛けるというのは、沢山の色んな仕事のなかでも、とてもエモーショナルなジャンルのお仕事だと思っています。
清水さんのように自分のブランドをもって、フリーランスとしてメインの仕事にしていく人。
他にメインの仕事を持ちながらも副業として自分のやりたい事を収入源の一つとして、ライフワークにしていく人と、様々な活動を目指していく方がLaVagueジュエリースクールには多くいらっしゃり、通われている方達の皆さんが、自分の素直な声を形にしていこうと努力されている方ばかりです。
今回取材させていただいた清水さんのお話は、きっと頑張り続けている人の心に響く内容になっていると思いました。
今、コロナ騒動で思うように動けない状況ではありますが、SHIIHAは新しくWEBショップをオープンさせたり、今出来る事に全力で取り組んでいる様子が伝わってきます。
こんな時期だからこそ、冷静に出来ること・これから先を見据えた準備と行動が出来るかどうかで、収束後に大きな結果が生まれるのだろうと思います。
SHIIHAのジュエリーは、きっとこれから数えきれない人たちの一生のパートナーを生み出し続けると、私は密かに確信しているのです。
これから子育ても、ブランド成長も、WEBのお仕事も全力で楽しむ清水さんの姿を応援しつつ、ずっと先の未来で清水さんのクレープを買いに行くことも、今の私の小さな楽しみの一つです。
だってきっと、とんでもなく美味しいクレープを作てくれるっていう期待と、清水さん自身に対する信用があるから。
夢を実現出来た人への信用は、とても大きいものです。
- 清水 悠花
- ジュエリー企画販売会社にて、ブランディングやイベント立案、生産管理から接客まで幅広い業務に携わり、ジュエリーデザイナーとしても経験を積む。
2019年より自身のブランド、SHIIHAを立ち上げる。 - https://shiiha.com/
- yuico
- 2014年からライターとしてジュエリーデザイナーの活動取材を手掛ける。
インスタのおすすめ検索が大体猫まみれ。
唐揚げに目がない。