ABOUT Designer's News
【一つのブランドが形になるまでの それぞれの物語】
このDesigner’s NEWSでは、いつか自分のブランドを持って好きな事を仕事にしていきたいと、LaVagueジュエリースクールに入学し、制作技法・ブランド運営のノウハウを学んで夢の一歩目を踏み出した方達を取材し、どんなきっかけで、どんな想いでジュエリーという世界で生きていくのか。一人一人のお話しを皆さんにご紹介していきます。
PICK UP BRAND
【KAZAMI JEWELRY】
今回、取材をさせていただいたのはKAZAMI JEWELRYデザイナー兼クラフトマンの濱岸風実さん。
平日は普通にOLとして働きながら、仕事後や休日に自身のブランドKAZAMI JEWELRYの活動をしています。
以前、新人ブランドにとって最初のステージであるDesigner’s FESTAという展示販売会では、初出展にも関わらず、100近いブランドの中から一般のお客さんが選ぶ人気投票で見事準グランプリを獲得。
次の年でも3位にランクインし、2年連続で表彰されるという実力派なブランドさんなのです。
個人的には、とっても優等生なブランドという印象。
色んな服装に合わせやすいシンプルさと、ちょっとゆるい遊び心がいい感じのバランスで、「あ、可愛い」とふと目を留めてしまいます。
若い女の子からの品のあるマダムまで、幅広い年齢層の女性が身に着けられるKAZAMI JEWELRYのアイテムはどうやって生まれていくのか。また、KAZAMI JEWELRYの誕生の裏側を濱岸さんに聞かせていただきました。
濱岸さん。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
【ジュエリーとの出会い】
私がまだ小さい頃、祖母がジュエリーの販売員をしていたこともあり、祖母の家に行くと指輪やピアスなど宝石のついたジュエリーが沢山ありました。
祖母はキラキラした綺麗な宝飾品を前に私が楽しそうにしていたからか、遊びに行くとよく見せてくれたりプレゼントしてくれたりして。
その他にも綺麗な石や貝殻が好きでよく集めていましたね。笑
それでもやはりその辺に落ちている石なので宝石のような輝きはなく、絵本の中に出てくるような金銀財宝や宝石は素敵だなーと思っていました。
そんなある日、私は公園で透き通った赤い実と金属の輪っかを拾いました。
この綺麗な赤い実が指輪だったら素敵だなと思い、輪っかにくっつけたら木の実なのですぐに潰れてシワシワになりとても悔しい思いをしたのを覚えています。
そんな幼い頃の記憶などから、ずっと綺麗なままで保管する事ができ、身に付けられるジュエリーにロマンを感じていました。
26歳の時「何をしてもうまくいく人のシンプルな習慣」という自己啓発本を読んだ事がきっかけで、影響されやすい私は今すぐにやりたいことをやらねばと思い立ったのです。
もともと憧れのあったジュエリーデザイナーですが、美大出身でもないし絵もうまくないし自分はできないと決めつけていました。
しかし本には自分自身の人生を受け入れて責任を持つこと、本当にやりたいことを思い切ってやってみることが書いてありました。
新しいこと、新しい人生を始めるのには勇気がいることですが、本を読んでいるうちに後悔しない生き方をしたいと思い、思い切ってジュエリーデザイナーを目指してみることにしました。
そうやって素直に「良い」と思った言葉をすぐに実行することってなかなか出来ないものです。
濱岸さんのように一歩目を勇気をもって踏み出せる人が夢を実現させていくのでしょうね。
【ブランドを立ち上げて広がった世界】
27歳でブランドを正式に発表・お披露目したので、1年弱の準備期間でしたね。
はい。笑
デザインの勉強は特にないです。マーケティングも大学の授業で受けたくらいですね。
ジュエリー制作の基礎の彫金と3D CADを学びました。
華奢なデザインのものなどは手作業で作る事が難しいため、CADを活用して制作しています。コンピューター上でデザインをして3Dプリンターで造形する為、手作業であれば何年もジュエリーに携わっている職人さんでないと難しいデザインなども作る事ができています。
また彫金で金属の特性や仕上げ方などを学んだことで、実際に造形したものを商品として綺麗に加工することができるようになりました。
なかなか初めて一年弱の人で出来るレベルではないと思っていましたが、納得でした!
自身の【KAZAMI JEWELRY】を立ち上げるとき、どんな想いを込めて作られたのですか?
KAZAMI JEWELRYは私が感じている貴金属や鉱物の美しさ、それらを身につけるロマンや楽しみを多くの人と共有したいという想いで作りました。
また「シンプルでいつでも身につけられるお気に入り」をテーマに流行やシーン、年齢などに左右されないずっと身に付けてもらえるようなブランドを目指しています。
私自身ブランドを立ち上げるようなイメージはなかったので、驚かれる事が多かったですね。笑
忘れられない想い出となっているのが、友達夫婦の旦那様からいただいた初めてのオーダーでした。
クリスマスプレゼントとして奥様とお揃いでつけられるアイテムを作って欲しいとのオーダーで、そんな大事なものを私に任せてくれる事がとても嬉しかった事を覚えています。
二人に喜んでもらえるような素敵なジュエリーを作ろうと思いましたね。
オーダー商品のお渡し後、二人で身に付けた素敵な写真を送っていただきました。喜んでくれた証なので、私にとって夢が一つ叶った宝物ですね。
今でもオーダー頂いた時は緊張するのですが、その時も嬉しさ半分緊張半分でした。
なぜなら大切な奥様へのクリスマスプレゼントを任せてもらうなんて…責任重大。嬉しさ半分緊張半分でお受けしたオーダーでしたが、予算やデザインのことなどもご相談いただき、想いのこもったペアのジュエリーをお作りする事ができました。
ジュエリーを作る仕事は作業自体ももちろん楽しいのですが、お渡しした後誰かの思い出になったり、大切な人へ想いをお伝えするお手伝いができる素敵な仕事だと思いました。
【本業との兼ね合い】
本業とブランド運営の両立ってどうやっているのですか?
平日は夜に、休日は昼くらいから工房に行き作業をしています。
よく大変だね、疲れないの?と聞かれますが楽しいので全然大丈夫です。
本業の後にジュエリー制作を行っているため作業時間が限られているので、展示会前などは大変ですけどね。。。笑
何がそんな原動力になっているんですか??
単純に作ることが楽しくって。
イメージ通りのものができた時や、逆に工程やサイズを間違えたことにより、思いがけず面白いデザインが出来たりする事もあり、それも楽しいです。
それに、毎日あれをやってみようこれを試してみようとかいろんなことに挑戦できて飽きる事がありません。
最初の頃はできなかった事が少しずつ出来るようになることも楽しいです。
好きなことや、小さな頃からの憧れを仕事に繋げていけた濱岸さんですが、同じように好きなことに挑戦してみたいと思っている方へ一言送るとしたら?
やるかやらないかで迷っているならやってみる。
とにかく楽しいと思うことを自分の心に従って挑戦してみる。
また、私がジュエリーデザイナーを目指すきかっけとなった本より「恐怖心とは、幻想なのに現実のように思える感情のこと」だそう。
この言葉を聞くと新しい場所に踏み込む勇気が少しだけ出てきます。
KAZAMI JEWELRYの素敵な物語を知ることが出来て、
より一層応援していきたい気持ちが強くなりました。
これからも、沢山の方たちの思い出や気持ちを存分に楽しみながら形にしていってあげてくださいね!
【自分に素直に生きることって、そんなに難しくないはず】 ー編集後記ー
取材での撮影中、濱岸さんにカメラを向けてシャッターをきるのがとても楽しかったんです。
ブースを観に来たお客さんと楽しそうに会話したり、作った商品の説明をしている表情は、真剣になったり、フワッと笑顔がこぼれたりと、コロコロ変わっていく。
どの表情も「あ、今の良いな」って顔ばっかりで、シャッターが追い付かず逃した写真に悔しい思いをしたくらいでした。
なんでこんなに取材が楽しいのかなって思うときって、最近気付いたのですが取材している相手がその瞬間を楽しんでるのが伝わってくるからなんだなって。
自分に対して素直で自由に生きている人って、普通の言い回しになってしまうけど「素敵」っていうシンプルな一言なんですよね。
今回、濱岸さんを取材させてもらった中で特に印象的だったのは、「やりたいことをやってみる勇気」でした。
いつ頃からなのでしょう。
子供の頃って何でも興味を持ったら、まず考えるよりも先にやっていたはずなのに、大人になるにつれてとても勇気が必要になってしまいました。
大人になってから、自分のやりたいことのはずなのに沢山の「不安」や「心配」 「仕事の忙しさ」や「生活のための金銭的な余裕」などのマイナス面の手札を自分の中でズラッと並べて
その中から挑戦出来ない理由を選んではどこかで「また今度・いつかきっと」と先延ばしにすることでひとまず安堵する。
結局、それはその時に勇気が出せなかったただの言い訳なのかもしれません。
そうこうしているうちに時間が経ち、またふとなりたかった自分を思い描いてみては「始めてみようかな…でも今更な…」を繰り返す。
そうやってモヤモヤしている時間って、結局何も生み出さないし、何も得ないし、何も前進しない。
そんなことを私も今まで何回も何回も繰り返してしまっているんです。
「やるかやらないかで迷っているならやってみる。
とにかく楽しいと思うことを自分の心に従って挑戦してみる。」
濱岸さんのこの一言にハッとした方も多いはず。
今、CMで「人生100年時代」というキーワードをよく耳にします。
本当かな?と思いつつも、もうすぐ32歳になる私は、まだあと68年もの時間があって、そのうち細かい手作業が出来るのもざっくり70歳くらいまで?
いや、うちのおばあちゃんは90歳で刺繍とかやってたな・・・と考えると、あと4~50年以上もあるのかって。
今まで生きてきた分丸ごと以上の時間があるって思ったら、なんだか何とでもなりそうな気がしてくるものですね。
濱岸さんのように、自分の好きなこと、気になること、楽しいことを少しずつでも生活の中に取り入れることから始めてみることでも、
きっと少しずつ何か変わってくるんじゃないかっていう気持ちにさせてくれた時間でした。
自分の心に従って生きてみること。
これからの人生において、とても良い言葉をもらえたインタビューとなりました。
この記事を読んでくれたあなたにとっても、何かの前向きなきっかけとなることを願います。
yuico
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- 濱岸 風実
- 1990年 4月生まれ
神奈川県出身
26歳からジュエリーデザインを学び始める
KAZAMI JEWELRY WEBSHOP
https://kazamijewel.thebase.in/ - http://www.kazami-jewelry.com/
- yuico
- 2014年からライターとして多くのジュエリーデザイナーの活動取材を手掛ける。
ブランドの良さを知るためには、ブランドを作り上げた人物の人柄と物語を知ることがそのブランドの価値観や想いをより一層理解することが出来ると考え、ブランド創設の背景と創設者自信にフォーカスを絞った記事をメインとする。