憧れ・目標のジュエリーで売上が立てられるようになったら、本業・場合によっては副業でも「収入に応じた税金」を国に支払う義務が出てきます。これにまつわる手続きの代表的なものが、確定申告。
いざ、やらなければならないぞ、となったときに焦ることないように。
ジュエリー販売をしていくために準備中の生徒さん、オリジナルのジュエリーを作って売ることに興味がある方に向けて、確定申告ってそもそも何?・どんな準備が必要?・理解しておくべきこと などの内容をまとめてみました。
これからジュエリービジネスにチャレンジしていく皆さんにとって、この記事がひとつの安心材料になればいいな!と思います。
確定申告って?
毎年、巷では年が明けお正月ムードが落ち着く頃「そろそろ確定申告だぞ」と耳にすることも多いと思います。
よくきく言葉だけど、実際になにをやっているの?そんなに大事なことなの?と疑問に感じるかもしれません。
どんなことをしているのかを理解しておくと、いざジュエリー販売で収入を得られるようになったときにやるべきことが整理できます。
確定申告の基本
私たちは、お給料をはじめ仕事で稼いだお金に応じて、国に「所得税」を支払っています。
会社員であればお給料から天引きされているところを、自ら立ち上げた事業で収入を得ている個人事業主の場合は、自分で「所得」を国の機関である「税務署」に届け出、その結果所得税をいくら納めるかを確定します。この手続きを、所得税の確定申告といいます。
(2023年施行で話題になった、インボイス制度が関係する「消費税の確定申告」とは別ものです。)
いつからいつまで、いくら稼いだら?
ジュエリー販売で収入を得たら、必ず確定申告しなければならないの?
といわれると、必ずしもそうではありません。収入額よっては、しなくてOKの場合もあります。
では、いつからいつまで、いくら以上稼いだら申告しなければならないのかですが・・・
申告額をまとめる期間:1月1日から12月31日までの1年間
この期間に生じた全ての収入が一定の金額を超えると所得税の申告義務が発生します。対象となるのは純利益です。
申告手続きの期間:翌年2月16日から3月15日までの1か月間内
申告と同時に、支払い(納税)も行う必要があります。
所得税が発生する収入額:以下、副業と本業で異なります。
◆副業の場合・・・20万円以上
※雑所得がある場合は合わせて20万円以上
◆本業(給与所得がない)の場合・・・48万円以上
基礎控除と呼ばれる、全ての納税者が所得から控除される金額が48万円なので、それを越えると税金の支払い義務が発生する、という仕組みです
Point! 純利益とは?
売り上げから原材料の仕入れ額や必要経費などを差し引いたもの。
Point! 純利益とは?
売り上げから原材料の仕入れ額や必要経費などを差し引いたもの。
所得税の確定申告の種類
所得税の申告は2種類あります。1.白色確定申告 2.青色確定申告 です。
個人で事業をスタートするときに提出する書類が「開業届」。提出すると、特別控除があって節税効果の高い青色確定申告を選ぶことができます。
ジュエリービジネスを本業にしていきたいなら収入額などは気にせず、青色申告でやって始めから慣れておくのがおすすめなので、ここからは青色申告を前提として進めていきます。
青色申告がなぜ節税効果が高いのかについては、記事の後半でお話していきます。
+one point!!
ジュエリーブランドとして知っておくと安心な収入と支出の種類
さて、確定申告をするためには「青色申告決算書」と「確定申告書」を提出することになります。
(青色申告決算書:1年間の事業の成果をまとめたもの 確定申告書:決算書を基に税額を計算した書類)
決算書に記載するお金の動き
申告するべき純利益を明確にするために、申告時に提出する決算書には「勘定科目」という分類ごとに収支を記録する必要があります。
日頃から帳簿(事業でのお金の出入りを記録したもの)をつけて記録したものが元になりますので、帳簿入力はとても大事な作業です。ここでは、ジュエリーブランドにまつわるお金の出入りについて具体例をまじえて見ていきましょう。
入ってくるお金(収入)
◎売り上げ
ジュエリーを販売することでお客様からいただいた金額。
販売方法や販売場所によって入金前に予め販売手数料が引かれる場合があります。これについてはこの項目の最後に!
◎助成金・補助金・給付金
コロナ流行で、個人事業主も給付金が受け取れる場合がありました。また、地域振興の目的で審査が通れば家賃補助などがもらえる自治体もあります。
出ていくお金(支出)
◎原材料の仕入れ
商品を作るための材料の仕入れに支払った金額。
宝石や地金、チェーンやピアスポストなどのパーツ。(場合によっては、ジュエリーケースなど販売時の付属品)
提携の業者さんから仕入れる際に、ラヴァーグの学生証を見せると購入額から少し割引になる特典があります!
◎外注工賃
鋳造、メッキ、磨きや石留めを外注したときに支払った工賃。
ラヴァーグではスクール内のサービスとして鋳造依頼の代行や、レーザーマーカーを使用した金種やブランドロゴ、イニシャル刻印などを行っています!プロとしてジュエリーを仕上げることが可能な環境が整っています。
◎販売スタッフへの依頼料
POP UP出店で誰かに店頭販売スタッフをお願いした場合に支払う謝礼。
2024年8月にラヴァーグで開催したセミナーでは、講師の方からスタッフさん探しのコツなどを教えていただきました!!
実際に行われたセミナーの様子です。スタッフさん探しの他、店頭やSNSでのお客様への接し方から、百貨店やセレクトショップバイヤーへのアピールの仕方、見ておくべきジュエリーブランドリストなど、ここでしか聞けない貴重な情報が盛りだくさんのセミナーでした!
◎備品・消耗品
ディスプレイ什器、ジュエリー製作に必要な工具や彫金机などの設備、ジュエリーCADを導入した場合のソフト代など。
ラヴァーグではCADソフトのライノセラスとジュエリーのデータ作成に特化したコマンドを導入できるプラグインの「エバンス」を生徒割引価格で購入することができます!ラヴァーグはジュエリーCADの指導を日本ではじめて取り入れたスクールです。(2005年から)
◎ECサイト、WEBサイトのプラットフォーム、サーバー使用料
選択するサービスによって、ネットショップやWEBサイトの運営に使用料が発生する場合があります。
ラヴァーグのアントレプレナーコースでは、売り上げにつなげるためのブランディングにおいて大事な、オフィシャルサイトの作成方法などのブランド運営のノウハウやコツを学ぶことができます!ブランドロゴ作成やジュエリー写真撮影など、各分野のプロフェショナルが集まっているのは、実際にブランド運営を行っているラヴァーグならでは。最短距離でブランドを立ち上げたい人におすすめのコースです。
◎設備使用料
場所を借りて作業した場合の使用料。
自宅を作業場や事務所として使用する場合は、家事按分という制度を利用して家賃の何割か(使用状況による)を経費として計上することができます。
ラヴァーグは、コースの受講を一通り終えたらフリーコースの受講でスクールの設備を商品製作のための工房として使用できます!!実際にブランドを立ち上げて活動しながら利用している生徒さんが多数おり、ラヴァーグを拠点として講師や周りの生徒さんとのコミュニケーションをとりながら切磋琢磨している姿をよく見かけます。
実際に行われたセミナーの様子です。スタッフさん探しの他、店頭やSNSでのお客様への接し方から、百貨店やセレクトショップバイヤーへのアピールの仕方、見ておくべきジュエリーブランドリストなど、ここでしか聞けない貴重な情報が盛りだくさんのセミナーでした!
+one point!!
百貨店や企画会社(仲介)を通してPOP UP出店すると、売上額に対して一定の手数料を先方に支払うことになります。
手数料の割合を掛け率と呼び、百貨店や企画会社との契約内容によって設定が異なります。
例:掛け率6.5・・・¥10,000の商品が売れた場合、ブランド側がもらえるのは¥6,500=お客様からいただいた¥10,000から¥3,500を出店場所や仲介業者に支払う という仕組み。
原価に対して余裕持って利益を上乗せしていれば、きちんと利益を手元に残すことができます。
商品価格の考え方、付け方については、ラヴァーグのアントレプレナーコース(ブランド立ち上げコース)で学ぶことができますよ!
確定申告書 記入項目
経費にはなりませんが、所得控除になる支出についても把握しておくといいです。こちらは確定申告書に記入する必要があります。
例えば、国民健康保険料や国民年金保険料、確定拠出年金(イデコ)、ふるさと納税をしていたら寄付金、などなどが控除になります。関連するお知らせや書類は見逃さずにとっておきましょう。
Point! 控除とは
控除とは、これもまた税金関係でよく聞く言葉です。
意味としては、「一定の額を差し引くこと」。所得控除は所得金額から一定の額を差し引くことで、税金がかかる所得金額を減らすことができます。
結果的に、納める税金が安くなり負担を減らすことができる、というわけです。
では、青色申告でこの恩恵に最大限あずかるにはどうしたらよいのでしょうか。
節税の大きなメリット・青色確定申告の特別控除
後の参考までに、青色申告の1番の節税メリットをご紹介します。
青色申告の特別控除
青色申告では、事業所得に関連する取引を複式簿記で記帳し、青色申告決算書を提出することで特別控除を受けることができます。
最大65万円の控除
青色申告では事業所得に応じて最大65万円の特別控除があり、これによって課税所得が減り、税金の負担を軽減することができます。
ちょっと難しいけど目を通しておこう。65万円の控除を受けるための条件!
1.事業所得、または事業的規模の不動産所得がある
2.1の所得に関連する取引について、複式簿記(※)で記載している。
3.申告時に、記帳に基づいて作成した貸借対照表と損益計算書を添付すること
4.期限を守って確定申告を行う。
5.現金主義でないこと。
6.e-Taxで確定申告を行うこと。
※複式簿記とは、取引を原因と結果の2つの面から記録すること。例えば、5万円の工具を購入すると、備品という資産が増えたので借方の欄に備品5万円と記入し、現金が減った(=資産が減った)ので貸方の欄に現金5万円、と記入する、これが複式簿記の書き方です。
この通り、はじめから65万円の控除を、サポートなしに受けるのはちょっとハードルが高いかもしれません。
条件が緩くなって、10万円、55万円の控除、というものも受けられます。まずは仕組みをなんとなくでもいいので理解し、10万円の控除を目指すところから始めましょう。
さらに、実際に確定申告を行うときは会計ソフトを利用されているブランドオーナーさんがほとんどです。
わからないとろこについては、税務署や町役場に問い合わせをすることもできますし、定期的に相談会も開催されています。まずは最寄りの税務署を調べてみましょう。他、全国に窓口がある青色申告会に入会してサポートを受けたり、費用をかけて税理士さんに代行してもらう、という手もありますが、規模が小さい内は、相談窓口に直接足を運んでみるのがおすすめです!
特別控除以外の節税メリットも、知っておこう
◎赤字の繰越
青色申告では、白色申告では原則としてできない「赤字の繰越」ができます。(3年間)
つまり、その年に生じた損失(マイナス)を翌年に持ち越し、翌年が黒字だった場合は相殺し(黒字から損失をマイナスする)、残りを所得として申告することができます。
つまり、税金を計算するときに元となる所得の金額を減らすことができるので、結果的に節税となるんですね。
◎家事按分
青色申告では、家賃や光熱費、車などプライベートと事業で共用しているものの費用を、「家事按分」の制度を利用して、比較的簡単に経費として計上することができます。
例えば、自宅兼アトリエとして借りている部屋の家賃10万円のうち、4万円を事業用の経費にする、なんてことが可能です。
ここでおさらい!!
ジュエリーを売って得た売上金額やその他の所得の合計から、材料費やその他経費を引いたもの(=純利益)が、税金がかかる収入として扱われます。
まとめると、税金を安くおさえるには、税金がかかる収入の合計(=課税所得)をいかに減らすか、がポイントとなるということ!!
そのために、経費を正しく計上し、控除をうまく利用していきましょう。
収支を正しく把握するためのコツは、↓のコンテンツから!!
申告の方法など
◎申告の仕方
白、青共に必要書類を準備し、税務署に提出します。
提出方法はいくつかあって、
●直接提出
●郵送
●e-Tax(電子申請)
から選べます。決算書や申告書は国税庁の公式サイトからダウンロードできるのですが、とっても探しにくいし、ややこし~い・・・。
筆者も試しにgooleで検索して探しましたが、ちょっと時間がかかりました。気になる方はコチラからどうぞ!
かな~り細かい項目にわかれており、パッと見ただけで頭を抱えてしまいそう・・・ちょっと埋めるの大変そう・・・なんて思われる方も多いかもしれません。
ジュエリー販売をしているラヴァーグのスタッフや生徒さんにもお話をきいてみましたが、やはりみなさん何かしらのサポートや、会計ソフトを利用して申告されています。まずは、あらかじめ頼れるサービスを探してみること。ラヴァーグの生徒さんなら、周りの先輩に話をきいてみるのもアリ!ですね。
◎納税について
申告さえできてしまえば、そこで確定した税額を銀行、郵便局、コンビニ、オンラインで納付すればOKです!
今回は、所得税の確定申告についてお伝えしました!
ブランドの成長には、喜ばれる商品作りと共に経営や販売の知識がキーポイントとなります。
ブランドを立ち上げたばかりの方には、これから認知を広げ、お客様との絆を深めるチャンスがたくさんありますよね。
これから始める方は、しっかりとした計画と基礎知識を持つことで順調なスタートを切ることができます。
生徒の皆さんにも日頃から伝えているように、技術とブランディングの両方をバランス良く学ぶことでブランドの成功は確実に手に届くものになります。
じゃあ実際にこれから始めよう!と思ったときに、
技術とブランディングの両方をバランス良く学ぶにはどうしたらいいの?
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