美しい輝きを放つダイヤモンドの特性として、一般的に知られているのは『地球上で最も硬い天然物』であること。これは、硬さを表すモース硬度が最も高い硬度10に位置付けらており、この硬度10をもつのがダイヤモンドだけだからになります。
しかしながら硬いダイヤモンドにも弱点があり、扱い方次第では簡単に欠けたり割れたりしてしまうことも。
そうした事態を防ぐためにもダイヤモンドの特性と耐久性についてまとめましたので、その扱い方を十分に注意していただき、ダイヤモンドの魅力を楽しんでみてください。
ダイヤモンドの強みでもある“硬さ”は、モース硬度10となっており引っかき傷にはとても強く、傷を付けるのは非常に困難です。
この硬度の高さは、共有結合という非常にコンパクトな結晶構造によって結合自体が非常に強いため、極めて硬い性質になっているからです。
ダイヤモンドを宝石箱などに保管する場合は、他の宝石と一緒にしてしまうと傷付けてしまう恐れがありますので、別々に保管しましょう。
さらに複数のダイヤモンドと一緒に保管するのもよろしくありません。ダイヤモンドに傷付けられるのはダイヤモンドだけなので、ダイヤモンド自体が損傷する危険性がありますので注意してください。
宝石の魅力を引き出す輝き。
その中でもダイヤモンドは、他の宝石に比べてとても美しい輝きを放ちます。
その理由の1つが“屈折率”です。屈折率とは、光の反射する度合いのことで、屈折率が高ければ高いほど、宝石は強く輝くのです。
屈折率の高い順でダイヤモンド(屈折率2.417)は圧倒的な1位となり、2位ガーネット(屈折率17.4~1.888)、3位ルビーとサファイア(1.762~1.770)となります。
もう一つの強みは〝安定性″です。
ダイヤモンドは硫酸・硝酸・塩酸・王水などのほぼ全ての酸に対して耐性がありまります。この安定性は数ある宝石の中でも上位を誇るほどです。
どの宝石よりも美しい輝きを放つダイヤモンドは、硬度の高さもさることながら安定性においても優れいたのです。
美しさ、耐久性を兼ね備えた人気のある宝石だけにいろいろなアクセサリーに飾られ、形状も様々あります。
その中でも、代表的なものをピックアップしてご紹介します。
最もポピュラーなダイヤモンドのカット方式で、1900年代に数学者であるベルギーの宝石職人の手によって発明されました。
名前の直訳『円形の優れたダイヤモンド』の通り、反射や屈折率など光学的特性を元にダイヤモンドが最も美しく輝く様にと数学的に計算されて誕生しました。
舟形のシェイプは、ダイヤモンドをより大きく見せる効果があります。
マーキスとは「侯爵夫人」という意味があり、1745年に当時のファッションリーダーであったポンパドゥール夫人にちなんで「マーキスカット」と呼ばれるようになりました。
「ペアー」は「洋梨」という意味で、一点が尖がり、もう一方が丸いシェイプになっている形状が洋梨に似ていることから呼ばれるようになりました。
細長いシェイプは、指をほっそり見せる効果もあり、指輪にも人気です。
エメラルドのカッティングによく使われているカットスタイルから、こう呼ばれています。
長方形のテーブルであることにより内部までよく見えるのが特徴です。
そのため他のカットでは気にならないインクルージョン(内包物)や傷も見えてしまい、石の透明度や質が高くなければ、美しく仕上げることはできません。
「バゲット」は、フランス語で「棒状の堅いフランスパン」の意味です。
こちらのダイヤモンドは、どちらかといえばメインストーンの添え物として配置されることが多いです。
名前の由来は、輝きに凛とした高貴な美しさがあることから、王女や王妃などの意味がある「プリンセス」つけられました。
四隅の角をしっかり残しつつ、原石の厚さを十分に生かすことでブリリアントカットの輝きを楽しめる、人気のダイヤモンドです。
婚約や結婚などのあいを表現するシュチュエーションで好まれ、ハートが正方形に収まる形状がバランスが良いとされています。
特殊な形であるため研磨工が1つ1つのファセットを手作業で磨いて形を整えていきま
上面が三角形であることから「トリリアント」と呼ばれています。
3つの頂点がバランスよく存在感を発揮し、美しさと斬新さの併せ持っています。
最も硬いと言われているダイヤモンドの弱点1つ目は“衝撃”です。
硬度10で傷を付けるのが困難な硬さではありますが『硬い=割れない』ではありません。衝撃の強度を示すのは『靭性(じんせい)』になり、ルビーやサファイアの次に高い強度になります。
ダイヤモンドは、靭性においても比較的高い数値となっておりますが一定方向からの衝撃には弱いので、落としたり、ぶつけたりしてしまうと欠けたり割れたりしてしまうことがあります。
硬いダイヤモンドが割れやすいもう一つの原因は“劈開面(へきかいめん)”の特徴にあります。
劈開面とは、ある決まった方向に割れやすい性質のことをいいます。
ダイヤモンドを構成している原子配列で一定方向に結合が緩い部分があり、この部分が劈開面です。
ここに強い力が加ることで簡単に欠けたり割れたりしてしまうのです。
ですが、この劈開面があるおかげで、硬度10の宝石であるダイヤモンドを4方向に綺麗にカットし、原石の形をおおまかに整えることができるのです。
2つ目の弱点が“熱”です。
極端かつ突然の温度変化が起こると損傷してしまう可能性もあり、特にフェザー(割れた断面)のある石の場合は、更に注意が必要です。
ダイヤモンドの材料の原子は炭素原子(記号C)だけなので、燃えてしまうと二酸化炭素になってしまいます。
耐熱温度は600℃ではありますが、600℃付近で「黒鉛化」してしまい、宝石としての価値はなくなります。
800℃を超えると炭化が始まり、ダイヤモンド最大の特徴でもある“硬さ”が失われ、軟化してしまいます。
日常的に使用する100℃くらいの熱であればほとんど問題ありませんが、研削や研磨での接触点の温度は1000℃を超えることもあり、住宅火災でダイヤモンドが燃焼したといった事例もあります。
美しい宝石は人々を魅了し、何世代にもわたって持ち主を変えて引き継がれます。歴史に名をのこす人物達の手を渡り歩いてきた世界で名高いダイヤモンド達があります。
その中のひとつである『ホープ・ダイヤモンド』をご紹介したいと思います。
映画「タイタニック」に出てくるダイヤモンド「ハート・オブ・ジ・オーシャン」のモデルにもなったホープ・ダイヤモンドは、見た目は美しいブルーダイヤですが、『持ち主に不幸を招く』という呪いの宝石として有名なのです。
〝ホープ・ダイヤモンド″を直訳すると『希望のダイヤモンド』。呪いの伝説を持つ石には似つかわしくないネーミングですが、ロンドンの大銀行家ホープ氏が所有していたかとから〝ホープ・ダイヤモンド″と呼ばれるようになりました。
なぜこのホープ・ダイヤモンドが『持ち主に不幸を招く』という呪いの宝石と言われるようになったのか、来歴をご紹介します。
始まりは1642年に旅行宝石商のタヴェルニエがインドで購入した112.25ctのブルーダイヤこそが〝ホープ・ダイヤモンド″の元になります。
これをルイ14世が購入し、再研磨され45.50ctの今の形になりました。ルイ14世が入手したころから、フランスの衰退の一端の兆しが現れフランス革命の原因になります。
ホープ・ダイヤモンドをペンダントにして身に着けたルイ15世は病死。
その後ルイ16世と王妃マリー・アントワネットが受け継ぎましたが、フランス革命で2人は処刑され、そのさなかにホープ・ダイヤモンドは行方不明となります。
そこから1830年ロンドンでの競売に出されていたのを銀行家であり宝石コレクターのヘンリー・フィリップ・ホープが購入。
1839年にホープ氏の死とホープ家の破産により、このホープ・ダイヤモンドは後に売却されました。
1911年に所有していたエヴァリン・ウォルシュ・マクリーンは、『ホープ・ダイヤモンドが自分の幸運のお守りである』と信じていましたが、所有した以後、幼い息子を交通事故で亡くし、夫は彼女と離婚した後に発狂して死亡、娘は自殺、幸せとは程遠い人生となりました。
1947年に夫人の死後、遺言で『20年は売却しない』としたものの同じくして債務弁済により、1949年ハリー・ウィンストンに売却。
ダイヤモンドを入手した時まで呪いを信じていなかった彼は、4回の交通事故に見舞われ、事業にも失敗した後に破産しました。
1958年に郵便でホープ・ダイヤモンドをスミソニアン自然博物館に送り付けられ寄贈となりました。
今現在も博物館で展示されています。
美しいホープ・ダイヤモンドは人々を魅了させた一方で、恐ろしいほどに不幸をもたらしました。
しかし、上記の事柄全てが確固たる歴史上の記録にあるとは限らず、ここまで世界中に広まったのは『豪華な宝石を好き勝手に売買する上流階級への、一般大衆のやっかみと好奇心』が要因ともいわれています。
また、ルイ14世の時代で再研磨された際に約半分がカットされていますので、「どこかに残りの半分があるのでは?」ともいわれています。
たくさんの伝説があるホープ・ダイヤモンド以外にも歴史のある宝石がたくさんありますので、調べてみるのも面白いと思います。