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専門家に聞く・宝石のルースにまつわる話とその使い道

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宝石のルースとは?

宝石とは、希少性があり、硬質で美しさのある鉱物の総称です。その特徴から、長い歴史の中でジュエリーなどの装飾品にあしらわれてきました。

ルースとは、採掘後の鉱物(=原石)がカット・研磨された状態で、リングやネックレスなど台座にはまっていない宝石そのもののことを指します。

今回、ルースを扱う専門業者であり、ラヴァーグでルースの販売会も行っていただいている 大八貿易 代表の榎本大八さんに、ラヴァーグの工房で生徒さんに彫金とワックス造形をレクチャーしている講師・春原が取材させていただき、宝石業界の今、ルースの選び方のポイントまで リアルで本音なお話をうかがってきました。

     大八貿易さんについて

     大八貿易さんの事業内容

     ルースを量産できる鉱物

     ルースを購入する人々

                  今のルース市場の中心地は?
     ルース生産国・タイとインドの違い
     ダイヤモンドの研磨 

        one of a kind が求められている

     ラボグロウンダイヤについて

         ルースが買えるところは?

     硬度から判断する・おすすめの鉱物

     割りにくい石のチェックポイント

ルースの専門業者として

大八貿易 代表の榎本大八さんについて

ー榎本さん、本日はよろしくお願い致します!
早速ですが、まずは宝石の輸入卸の会社である、大八貿易の代表・榎本大八さん自身についてうかがわせてください。

20年前就職氷河期の時にバックパッカーが流行っていて、バイトでお金貯めて世界一周してから就職しようと思ってたんです。それで買った求人誌に、ちっちゃく「海外バイヤー募集」って載ってた。独立する前に勤めていた会社だったんです。宝石に特別興味があったというより、この会社に就職すれば世界一周できるはず・・・と思ったら行く国ほぼほぼインドでした(笑)でも、先々で色~んな人に会えることが、楽しくって仕方がなかったです!

ーたまたま宝石輸入卸の海外バイヤーをやってみて、人とすごく関われる世界というのが魅力的で、そこにずっといらっしゃるっていうことなんですね。

元々、人とこうやってコミュニケーション取るのが好きなんです。卸っていうのは特にお客様の要望に全部答えていくと、喜んでもらえるじゃないですか。それも圧倒的に楽しかった。

 ーすごくわかります。私たちもスクールで教えていて、生徒さんから「先生に教えてもらったおかげでうまくできました!」って言われたときめちゃくちゃ嬉しいので!

大八貿易さんの事業内容

ー大八貿易さんの会社としての事業内容をおしえてください。
ジュエリーの専門業者は、大まかに、 1ジュエリーメーカー、2問屋、3小売、4石屋、5工具屋、6メッキ屋・キャスト屋、7地金屋
なんです。石屋は大きく分けると2つあり、新たに研磨されたルースを扱う業者と、セカンドを扱う業者です。

当社は前者で、主に海外から輸入したルースを扱っています。一方、今まさに前線なのは、セカンド。買い取ったジュエリーから石を外して販売している業者さんです。

そして輸入と言っても当社の場合は、海外で買い付けたルースを国内で販売する他に、OEM生産を主軸としています。ジュエリーブランドのデザイナーさんからデザイン画をいただき、それに必要な石を用意するという仕事です。仕様書を英語に訳して海外の仕入れ先に送り、製作の依頼をします。
ージュエリーブランドさんからの受注生産というわけですね。例えばブランドさんから、この宝石をこのサイズとカットで、という依頼がくる。

そういうことです。海外の依頼先にも得て不得手があって、この内容はタイのあの工場がいい、などど振り分けたりもしますよ。

▼大八貿易さん オフィシャルサイトはこちら

ルースを量産できる鉱物

世の中には400種類以上の鉱物が存在するんです。 400種類の中で量産できるのが40種類。 40種類の中だったら、「この石でこの形をいくつ揃える」っていうことができるんです。
ー産出の仕方や産出量によって量産できる宝石があるんですね。意外と知らない方も多いのではないでしょうか。

ルースを購入する人々

ージュエリーブランド さん以外には、どんな方がルースを購入されますか?

イベント出展なんかだと、そのイベントの種類にもよりますが 個人でジュエリーブランドを運営されているデザイナーさんが直接仕入れに来たり、ジュエリー制作を趣味とされている方、鉱物好きの方、ルースをメーカーさんに持ち込んで仕立ててもらう目的の方など、様々です。

ー最近、ルースを購入できるイベントの数も増えてきていますし、ブームが来ているのを感じますよね。

今、空前の色石(※)ブームと言われています。
漫画やアニメで取り上げられたのも一つのきっかけのようですよ。マニアックな石を探している方もいます。

※いろいし。カラーストーン。=ダイヤ以外の色付きの宝石。ルビーやエメラルドなど
ー以前、スクールに1日体験にいらっしゃった方も業者さんにルースを渡してジュエリーに仕立ててもらっていたけれど、思い描いているデザインがなかなか伝わらなくて、自分で作ることができたらいいなと思ったそうです。 もちろんできますよ、とお話しました。

▼ルースを使ったジュエリー製作が学べるコース▼

▼ルースを使ったジュエリー製作が学べるコース▼

ルースが辿る道・技術の発達

今のルース市場の中心地は?

ー海外にはどのくらいの頻度で行ってらっしゃるんですか?
3ヶ月に1回くらいですね。今一番行ってるのは変わらずにインドで、内訳としてはインド → 日本 → インド → 日本 → タイ → 日本  という感じです。
ーそれぞれの天然石って採掘されるところが世界中にありますが、最後集まってくるのはインドなんですね。
そうなんですよ。今は研磨技術・技術者、インドが全部持っていて充実している。 ダイヤもカラーストーンもそうです。 世界の色々な場所、例えば南アフリカで採掘されたダイヤであろうと、ロシアだろうと、インドを経由して各国に宝石として供給される。

ルース生産国・タイとインドの違い

ーもう1ヶ国挙げられていたタイ とインドとの違いはどんなところですか?

昔、タイはインドよりも先進国で綺麗、というのがあった。それがここ10年前ぐらいからインドの技術力が上がって、タイと変わらなくなった上にタイは工賃が高くなってしまった。だからインドに集まるんですね。
しかしルビー、サファイアは今だにバンコクの方が多いです。

ータイには主にルビー、サファイアを見に行かれているんですね。
そうですね。あとは、インドではムンバイがダイヤ、ジャイプールが色石、っていうすみ分けがあります。

ダイヤモンドの研磨

ー例えば、大八貿易さんが扱っているダイヤの原石が、どこで採れたものなのかはっきりわかりるものですか?

大きいのはわかるのですが、メレダイヤ(※)になってしまうと実はなんとなくしかわからないんです。欠片になったものを研磨していくわけですから。

ダイヤは、原石専門に扱っている業者さんがいて、そこから仕入れてカットして。それを僕たちは仕入れる。
鉱山→原石屋さん→マニファクチュア  という順番ですね。

ダイヤの研磨技術ですが、今はパソコンに表示されたガイダンスに従って機械を操作するようになっていて、体系ができてます。

原石の石取をどうするか、PCの画面に3Dで 3パターン、5パターン・・・シミュレーションしたものが出るんです。ペアシェイプとか、ファンシーカットにも対応していて、無駄がないよう徹底されていますよ。色石は未だに職人の腕に左右されますけどね。
※メレダイヤ・・・小粒なダイヤモンドのこと。

今、求められるジュエリーとルースのトレンド

one of a kind が求められている

 ー今、ジュエリーではどんなものが人気か、石屋さん目線でお聞かせください。
ジュエリーと石の関係でいうと、今mass(※)の売り上げが伸び悩んでいる。
それに対して今、ジュエリー好きの方は one of a kind  唯一無二の、1点ものに近いものが欲しいと思っているようです。この5年は特にそうで、3万円から10万円の予算でジュエリー探してる層がそういう傾向は高いと思います。 そして中間層だけじゃなく、富裕層の方も「世の中にないもの」が欲しいと思ってきている。この5年は特にそう感じます。
 ー天然石そのものが、色やインクルージョンの入り方など自然なものだからこそ同じものには二度と出会えない可能性がある、ということと関係していますね。人気が高まっているのもうなずけます。
※mass・・・マーケティング用語で、マス。大衆。不特定多数。

ラボグロウンダイヤについて

ダイヤのジュエリーに関しては「ラボグロウン」が出てきました。
2023年6月僕がインドに行った時に、ラボグロウンは天然ダイヤと同じコンディションで2〜3割しか安くなかったんです。それが9月には価格が10分1以下になった。それで扱うブランドも増えていったという経緯があります。 さらに今、ラボグロウンには鑑定書が付けれる。 今アメリカの若者で、エンゲージリングを作る時にラボグロウンを選ぶ人が結構多いそうです。 天然の希少性よりも、「地球に優しい」ということで選ばれている。なので今後もっとラボグロウンの需要が増えていくだろうと言われています。 日本はまだそこまできていませんが、これから浸透していくかもしれない。大きなブランドが大々的に打ち出せば、きっと状況がガラッと変わると思います。
 ー人工=偽物 というイメージから エシカル・サステナブルな意識が高まることで価格以外の部分で「あえて」ラボグロウンが選ばれるようになってきているんですね。 時代の移り変わりを実感します。今後もしっかり追いかけていきたい話題です。
▼ラボグロウンダイヤモンドについての深掘り記事はこちら

スクールの課題に使う石の上手な選び方

ルースが買えるところは?

ールースの選び方がわからない生徒さんっていうのが結構いらっしゃって、どうやって買ったらいいんだろう。選んだらいいんだろう。という声があります。 場所としては イベント・店舗を構えているルース屋さん・ネットショップ などで宝石のルースを購入することができます。
尚、大八貿易さんにはラヴァーグジュエリースクールがあるビルの2Fで、2024年2月17日(生徒のみ)と18日(一般入場可)に販売会を行っていただきます。
▼詳しくは
Lavague Jewelry school インスタグラム
                               詳しくは→
榎本さんには、ルースの選び方のコツをうかがいたいと思います。
Lavague Jewelry school インスタグラム
ルースのケースには、石の名前やサイズなどの記載があるので確認してみよう。

硬度から判断する・おすすめの鉱物

初めは、高価ではないものでチャレンジするのがいいと思います。

石留めのとき割れたり欠けてしまうこともあるから、そうなると結構ショックを受けると思うんです。
そうなると、石で比較的安価で手に入るのは、クォーツ系で、例えば アメジスト・シトリン・スモーキクォーツなどがあり、色も選べますからね。
あとは探す時に、サイズは具体的にイメージしておいた方がいいです。そこはラヴァーグの先生方に訊いてみてください!

 

ーもちろんご質問ください!クォーツ系でもそれ以外でも、具体的なチェックポイントはありますか。
一つはモース硬度。googleとかで石の名前で検索すればすぐにわかるので便利な時代です。イベントによっては硬度3の石も扱っていたりするのですが、傷つきやすいので避けた方が無難かなと思います。
ルースのケースには、石の名前やサイズなどの記載があるので確認してみよう。
ーモース硬度何以上だったら初心者の生徒さんに勧められますか?
6以上が無難だと思います。クォーツは7だから、やはりおすすめですね。
▼モース硬度のことが載っている記事はこちら

割りにくい石のチェックポイント

あとは、内部のインクルージョン(※)が外まで達していると、その部分は割れやすいので爪で留めるのは避けたデザインにしたほうがいいです。 中の方にインクルージョンがぽつんとあるのはまだリスクが低くて、面傷(表面にある傷)も好き嫌いで選んでいいと思います。
※インクルージョン・・・宝石に含まれるさまざまな内包物。結晶のなかに取り込まれた別の鉱物や液体、気体などの不純物や、ひび割れやくもり などのこと。
ー割れのリスクの程度は、インクルージョンの位置が大事ってことですね。

きわどいインクルージョン があったとしたら、そこを外して留めることもできますが上級者向きかな。
その辺りを抑えておけば、加工上のルースの選び方としては十分だと思います。

ーわかりやすいです! ここがクリアできたらあとは好みですよね。
初心者におすすめのルースの選び方
・モース硬度 6以上
・内部のインクルージョンが外まで達していない
・クォーツ系で探す

業者さんと信頼関係を築くことが大事

ールースをジュエリーにして販売する前提で仕入れる場合って、仕入れる時に気を付けるポイントはありますか?
細かく挙げるとキリがないから・・・ 言ってしまえば、騙されてもいいなって思う人から買うことかな。信頼できる人ということですね。 信頼をどう築いているかってのも大事で。 価格が安いという理由で値段だけで仕入れていると、その時だけの関係になってしまう。 僕たちのお客さんは皆さん長い付き合いで、だんだんとそのお客さんのビジネスについてわかってくるから、提案もできるんですよ。
ー例えば、このブランドに、これが合うんじゃないですか、使えるんじゃないですか?ということでしょうか。
そうです! 僕たちも海外のサプライヤー(仕入れ先)に対して対話しながら、長く付き合うことを前提として取引するように心がけています。他と比較して差が大きい場合はもちろん交渉したりはしますけど、根拠のない値切りはしません。 関係性がしっかりしていると、大変な時や困った時にお互いに助け合うこともできる。 一緒に育てていくみたいな感覚でやっていくっていうのが、気持ちのいい仕事の仕方かなって思います。

ーなるほど〜!ただ、ルースを売る・買うだけにとどまらず、しっかり人間関係を築くことがお互いにいい仕事に繋がる。そういう考えを持った石屋さんが味方になってくれるとブランドとしては心強いですね!
榎本さん、本日はお忙しい中、貴重なお話をきかせていただきありがとうございました!
ぜひラヴァーグとも長くお付き合いいただきたいと思います。

今後の出展イベント

大八貿易さんの2024年の出展予定のイベントです。
・2/18(日)  販売会 ラヴァーグジュエリースクール
 2Fブライダルサロン
・4/27日(土)〜29日(月) 石ふしぎ大発見展 大阪天満橋OMMホール
・7/12(金)~14(日) TKYO JEWELRY FES
・10/4(金)~7(月) 東京国際ミネラルフェア
※最新の情報は大八貿易さんのサイトやSNSでご確認ください。

取材の後

2024年1月17〜20に開催されたIJT(国際宝飾展)に足を運びました。大八貿易さんはじめ、宝石を扱う石屋さん、ジュエリーメーカー、工具屋さん、海外の企業など様々な出展がされていました。 大八貿易さんのスタッフさんにお話をうかがったところ、今回はオパールを探しているお客様が多いとのこと。展示会毎に求められるものが違う場合もあるそうです。 どんなことにも言えますが、ラボグロウンダイヤの登場など業界の在り方や状況は刻一刻と変化しています。 今回、榎本大八さんのようなプロフェッショナルにお話をおききし、より一層実感しました。 取材は、榎本さんのお人柄からとても楽しい時間でもあったのですが、私達ラヴァーグのスタッフはこれからもより一層、生徒さんのジュエリー業界での活躍を後押しする立場としてアンテナを張り続けなければならないと、身の引き締まる思いもするのでした。
IJTで筆者が購入したルース。何に仕立てようか??今からワクワクしています!

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