「世界5大ジュエラー」と称されるブランドは何か、ご存じですか?ハリーウィンストン、ティファニー、ブルガリ、カルティエ、ヴァンクリーフと、いずれもジュエリー好きなら誰もが憧れるブランドといえます。本コラムでは、この5つのブランドと、その歴史についてひもときます。
世界5大ジュエラーとは
「世界5大ジュエラー」とは、世界的に知名度や人気があり、長い歴史を持つ老舗のハイジュエリーブランド、「ハリーウィンストン(HARRY WINSTON)」「ティファニー(TIFFANY & Co)」「ブルガリ(BVLGARI)」「カルティエ(Cartier)」「ヴァンクリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels)」の5つのジュエリーブランドのこと。
ハイジュエリーと呼ばれるものは、希少性が高い宝石があしらわれていたり、デザイン性・芸術性に優れたものが多いため、価格も高額です。
そのため、ハイジュエリーを扱う世界5大ジュエラーは、「高品質でデザイン性に優れた高額なジュエリーを取り扱うハイブランド」というイメージがだんだんと人々の間に定着していきました。
古くは王族や貴族などの権力者、また、現代では芸能人やセレブと呼ばれる人まで、世界5大ジュエラーのハイジュエリーに魅了された人達はたくさんいます。
世界5大ジュエラーの魅力と歴史
世界5大ジュエラーと呼ばれている「ハリーウィンストン」「ティファニー」「ブルガリ」「カルティエ」「ヴァンクリーフ&アーペル」は、いずれも歴史あるハイジュエリーブランドとして人気があり、知名度も抜群。一度は身につけてみたいと憧れる方も多いのではないでしょうか。
世界中の人々を魅了してきたハイジュエリーは、ハリウッド女優やセレブなどの間でも大変人気があります。
アメリカの映画の祭典、アカデミー賞授賞式などでは、宝石がふんだんに使われた煌びやかなネックレスやイヤリングを身につけ、颯爽とレッドカーペットを歩いている華やかなセレブを多く見ることができます。
ほとんどのセレブが、世界5大ジュエラーが取り扱うものの中から、晴れの舞台用のジュエリーをセレクトすることが多く、授賞式などの公の式典では、億単位の豪華な宝石が施されたジュエリーを身につける人は少なくありません。
もともとは、古代エジプト時代に、魔除けなどの意味合いから身につけていた指輪やブレスレットなどの装身具が転じて、ファッションとしての宝飾品に変わって行ったと言われているジュエリー。世界5大ジュエラーにもそれぞれ歴史があり、今もなお、5つのブランドは多くの人々から愛され続けています。
そんな、多くの人からの支持を得て、世界5大ジュエラーに格付けされている、5つのハイジュエリーブランドの歴史や魅力は、どのようなものなのでしょうか。それぞれのブランドごとに、その歴史や特徴について、ひも解いていきたいと思います。
【ハリーウィンストン】
画像参照元サイト https://www.harrywinston.com/ja
◆「ハリーウィンストン」の歴史◆
1932年アメリカのニューヨークで創業。
創始者である、ハリーウィンストンは、「ハリー・ウィンストン社」として事業を始めるより以前から、小さな宝石店を経営していた父親の影響を受け、宝石学に長けていたため、すでにジュエリー市場で高い評価を受けていました。
元々ある宝石学の知識を生かして、だんだんとビジネスを拡大しつつ、今のハリーウィンストンブランドの地位を築き上げていったと言われています。
2012年には、スイスの時計メーカーであるスウォッチグループの傘下に入り、人々を驚かせました。
◆「ハリーウィンストン」の魅力◆
ハリーウィンストンと言えば「ウィンストニアン・スタイル」と呼ばれる技法でセッティングされたダイヤモンドジュエリーが有名。
ウィンストニアン・スタイルは、地金の使用量を最小限に抑えるべく、プラチナのワイヤーを使ってダイヤモンドなどをセッティングする方法。そうすることにより、ダイヤモンドの輝きを最大限に引き出すことができるのだそうです。
アメリカの雑誌「コスモポリタン」が、世界的に有名な宝石の3分の1以上を所有していたと言われている、創始者ハリーウィンストンの輝かしいキャリアを評して「キング・オブ・ダイヤモンド」と称えた逸話も残っているほど、ダイヤモンドや宝石と造詣が深いハリーウィンストン。
ハリーウィンストンは、目の肥えた顧客のニーズに応えられるよう、希少なダイヤモンドや宝石を求めて世界中を旅したとも言われています。
【ティファニー】
画像参照元サイト https://www.tiffany.co.jp/
◆「ティファニー」の歴史◆
1837年アメリカのニューヨークで創業。
ティファニーの前身である、「ティファニー・アンド・ヤング」という、文房具や装飾品などのお店から宝石事業へ進出し、今の宝石商の地位を確立して行きました。
日本では、オードリーヘプバーンが主演した不朽の名作「ティファニーで朝食を」の映画を観てティファニーに憧れた人も多いのではないでしょうか。1961年に上映されたこの映画は、ニューヨーク五番街にあるティファニー本店で撮影されています。
ティファニーは映画との関わりも深く、メグ・ライアン主演の「めぐり逢えたら(1993年)」、リースウィザー・スプーン主演の「メラニーは行く!(2002年)」などのロマンティック・コメディ映画にも、ニューヨークのティファニー本店が登場します。
1956年には、植物や海洋生物をモチーフにするのが得意な「ジャン・シュランバージェ」、1974年には、彫刻的な感性が際立つ「エルサ・ペレッティ」、1980年には、ストリートアートからデザインを生み出す「パロマピカソ」などの歴代デザイナーを迎え入れ、ティファニー独自のスタイルを確立して行きました。
また、ティファニーは、銀製品にも精通しており、シルバーの純度基準を925/1000と設定しました。後に、ティファニーが定めたシルバーの純度基準が、米国の公式基準として採用されています。
◆「ティファニー」の魅力◆
ティファニーのエンゲージメントリングなどに使われている「ティファニーセッティング」の技法は、ダイヤモンドを最高に輝かせるセッティング方法として、あまりにも有名です。
この技法では、ラウンドブリリアントカットされた1粒石のダイヤモンドを、6本の立て爪で高い位置に留めてセッティングすることにより、光の反射を最大限に集めて、ダイヤモンドをひときわ美しく輝かせることができると言われています。
この、ダイヤモンドを最大限に輝かせる「ティファニーセッティング」を確立したことにより、「人生のうちで最高に自分を輝かせたい瞬間にはティファニーを」と憧れる女性が増えたと言っても過言ではないかもしれませんね。
画像参照元サイト https://www.tiffany.co.jp/engagement/engagement-rings/the-tiffany-setting-engagement-ring-in-platinum-GRP10862/
【ブルガリ】
画像参照元サイト https://www.bulgari.com/ja-jp/
◆「ブルガリ」の歴史◆
1884年イタリアのローマで創業。
ブルガリの歴史は、ギリシャ系イタリア人のソティリオ・ブルガリが、ローマのシスティナ通りに店をオープンしたところから始まります。
銀細工師の家系で育ったブルガリが手掛ける美しい銀装飾が、イギリス人観光客の支持を集め、システィナ通りの1号店を皮切りに、コンドッティ通りや観光地などに次々とブティックを出店し、事業を拡大して行きました。
ソティリオの息子、ジョルジョとコスタンティーノがハイジュエリー制作に取り組んだことにより、店はさらに成長して行き、だんだんとブルガリ独自のイタリアスタイルを確立して行きます。
1950年以降、アメリカの映画業界がイタリアのローマで映画制作をするようになったことなどから、コンドッティ通りのブティックは映画スターや著名人が集まる社交の場となり、ブルガリは国際的な名声を確固たるものにします。
1970年代には腕時計を発表。その後も、香水、レザーアイテムなど幅広く商品を取り扱い、現代では、ホテル事業に取り組んだり、カフェを併設した店舗をオープンさせるなど、まだまだ進化し続けています。
◆「ブルガリ」の魅力◆
ヘビの形のデザインが印象的な「セルペンティ」は、ブルガリのデザインの象徴。
ヘビは、太古の時代から「英知、再生、生命の象徴」としてさまざまな神話に登場し、装飾やお守りに取り入れられていることから、ブルガリの時計やジュエリーなどのデザインに多く使われているそうです。
また、ブルガリは、ルビーやサファイヤ、エメラルドなどの美しいカラーストーンを多数組み合わせることにより、ブルガリらしい独創的なカラーやデザインのハイジュエリーをいくつも生み出しています。
ブルガリのデザインで言えば、一般的には時計のベゼル(縁の金属部分)にブランド名が施された「ブルガリ・ブルガリ」のコレクションがもっとも有名です。2020年には、1998年に発売された「ブルガリ アルミニウムウォッチ」の復刻版が発売され、話題となりました。
これからも、他のブランドにはない、個性的で芸術性があるモチーフやデザインのジュエリーを求める人達の支持を集め、ブルガリは、ますます進化し続けるのではないでしょうか。
画像参照元サイト https://www.bulgari.com/ja-jp/collection/serpenti.html
【カルティエ】
画像参照元サイト https://www.cartier.jp/
◆「カルティエ」の歴史◆
1847年フランスのパリで創業。
創始者であるフランス人宝石細工師、ルイ=フランソワ・カルティエが、師からジュエリー工房を受け継いだところから、カルティエの歴史が始まりました。
1853年頃には、個人顧客を対象としたジュエリーブティックを構え、後にフランス皇帝ナポレオン3世の皇后である、ウジェニー皇后が顧客となり、王族や貴族の間でカルティエの名声が広がって行きます。
1900年代の始め頃には、イギリス王室御用達となり、イギリスのエドワード7世から、「王の宝石商」「宝石商の王」と言われる程の名門ブランドへと成長。他にもスペイン、ポルトガル、ロシア、ギリシャ、など15か国以上の王室御用達となりました。
同じ頃、経営に携わるようになった、3代目のルイ・カルティエが、彼の飛行家の友人であるアルベルト・サントス=デュモンに依頼され、時計を制作。カルティエは、これをきっかけに、時計の制作事業にも力を入れるようになって行きました。
時計分野においても他の追随を許さない確固たるブランドへと成長したカルティエは、1974年に日本で初めてのブティックを原宿にオープンさせます。今ではハイジュエリーブランドばかりが集う銀座に本店を構え、不動の人気を誇っています。
◆「カルティエ」の魅力◆
カルティエを代表するブランドアイコンと言えば、豹がモチーフになった「パンテール」です。1914年発売当時、女性用の腕時計に、オニキスとダイヤモンドをあしらい、パンテール(豹)を表現したのが「パンテール コレクション」の始まりだと言われています。
腕時計から始まり、シガレットケースやブローチ、リングなどのパンテールも登場。パヴェダイヤとサファイヤなどのカラーストーンがあしらわれた高級感あるパンテールジュエリーは、昔も今も永遠の憧れです。
最近では、ジュエリー全体にパヴェダイヤをあしらわず、ゴールドなどの金属に瞳の部分だけ宝石を使用した、シンプルなデザインのパンテールリングなどもあり、富裕層でなくても、手に入りやすくなりました。
また、カジュアルな装いでも身につけられる、エレガントでスタイリッシュなパンテールの時計なども人気があります。
画像参照元サイト https://www.cartier.jp
【ヴァンクリーフ&アーペル】
画像参照元サイト https://www.vancleefarpels.com/jp/ja/home.html
◆「ヴァン クリーフ&アーペル」の歴史◆
1906年フランスのパリで創業。
宝石商の娘である、エステル・アーペルとダイヤモンド商であり宝石細工職人の息子、アルフレッド・ヴァンクリーフが結婚し、「ヴァンクリーフ&アーペル」が誕生したと言われています。
アルフレッドと、義理の兄にあたるシャルルがヴァンドーム広場にパリ本店をオープンさせてから、次々と国際的な博覧会などでグランプリを受賞し、「ヴァンクリーフ&アーペル」の知名度が上がって行きます。
1933年には「ミステリーセット技法」の特許登録をします。これは、石を留める金属を表から全く見せずに貴石をセットする技法。宝飾世界の偉業と呼ばれました。
そこから、6年後の1939年にはアメリカのニューヨーク、ロックフェラーセンターにブティックをオープンさせます。
1968年には、ヴァンクリーフ&アーペルの代名詞とも言える、「アルハンブラコレクション」を発表。1973年、パリの宝石店としては日本で初めてのブティックをオープンしています。
その後は、ジュエリーだけでなく香水なども手掛け、2012年にパリのヴァンドーム広場で開校した「レコールジュエリーと宝飾芸術の学校」の支援をするなど、多方面で活躍しています。
◆「ヴァン クリーフ&アーペルの魅力◆
ヴァンクリーフ&アーペルと言えば、「アルハンブラ コレクション」です。アルハンブラは、四葉のクローバーのモチーフに、オニキスやホワイトマザーオブパールなどの素材を使用し、ゴールドビーズで縁取りしているブランドの代表的ジュエリー。
モナコ公室御用達ブランドとしても知られているヴァンクリーフ&アーペルのジュエリーは、幸運のシンボルである四葉のクローバーや、花などの自然をモチーフにしているのが特徴的で、そのシンプルで上品な作りに人気の秘密があります。
「アルハンブラ」だけでなく、ゴールドビーズが印象的な「ペルレ」など、ヴァンクリーフ&アーペルのジュエリーは、カジュアルにもエレガントにも合わせやすいシンプルなものが多く、どれも一つは持っていたい逸品なのではないでしょうか。
画像参照元サイト https://www.vancleefarpels.com/jp/ja/collections/jewelry/alhambra/vcara45900—vintage-alhambra-pendant.html
グランサンクとの違いって?
「世界5大ジュエラー」と「グランサンク」の大きな違いは、フランス高級宝飾店協会が認めた、パリのヴァンドーム広場とラペー通りに店を構える、パリ5大宝飾店であるか否かというところにあります。
【グランサンクの5大ブランド】
【ヴァンクリーフ&アーペル】
【ショーメ】
【ブシュロン】
【メレリオ・ディ・メレー】
【モーブッサン】
フランス高級宝飾店協会に認められる事が前提ですので、アメリカを拠点とした、ハリーウィンストンやティファニーなどのジュエリーブランドは、グランサンクでないことがわかります。
「世界5大ジュエラー」と一部被っているブランドもありますが、別物です。
【世界5大ジュエラー】まとめ
いかがでしたか?「ハリーウィンストン」「ティファニー」「ブルガリ」「カルティエ」「ヴァンクリーフ&アーペル」のそれぞれの歴史を知ると、「世界5大ジュエラー」と呼ばれている理由にも頷けるのではないでしょうか。
どのハイジュエリーブランドも、長い歴史があり、その中で宝石の美しさを最大限に引き出す技法や、芸術的なデザインを生み出し、ブランドの確固たる地位を築き上げてきました。
ジュエリー界で不動の地位を得た「世界5大ジュエラー」は、これからも世界中の人々を魅了し続けてくれることでしょう。