金属切削体験記事
ジュエリーを作る工程に“金属切削” (きんぞくせっさく)という選択肢
ラヴァーグジュエリースクールでも金属切削機を導入して生徒さんからの注文も受け付け、自社のハワイアンブランド”PuaAlly”の商品制作にも使っています。
切削とはその名の通り材料を塊から削り出す加工方法ですが、金属も直接削り出す事が出来るそのメリットを、実際に加工依頼をした時にはどの様な流れで進んでいくの行くのかを、体験しながらお伝えして行きたいと思います。
今回は彫金総合と、CAD総合、アントレプレナーコースを受講されている斎藤彩香さんに伺いました。
ーー斎藤さん、今回はご協力ありがとうございます!
現在、ジュエリーCADを学ばれていますが、デザインを考えてデータを作っている中で、3Dプリンターの造形上難しかった経験はありませんか?
私は複雑なデザインを作ってないので難しいと言われた事はないですが、CADでのデザインは造形の時に造形跡が出来てしまうので、造形跡(※1)ができると嫌だな、磨けないな、このデザイン作るのはちょっと考えようと思う事が増えてしまいました。
あとは気になっているのは細さです。 もう少し細くしたいけど、キャストをすると縮んでしまうのであらかじめ太くしておくんですが、そうすると雰囲気が大きく変わってしまう気がして。
立体になったのを見た時に、なんか違ったなって思う事もありました。
(※1)造形跡=3Dプリンターで出力する際に出来る地層のような細かい積層のなごり。
ーー薄くて細いデザインだと鋳造(※2)をした後に変形してしまう事が多いですよね。
(今回斎藤さんの依頼データーがこちら)
ーー今回依頼していただいたこちらのデータをちょっと解説して行くと、こういう厚みが均一な板状のCADデータを3Dプリンタで造形した場合、一部分が凹んでしまったり変形する事があるので、WAX切削を選ぶ事が多いです。
金属切削機を持っている加工所があまり多くはないというのも理由の一つですが、どちらも造形した後には鋳造をする必要があり、はじめのデータよりも少し縮んでしまいます。
なので通常データを作る時に収縮を見越したデータ作りをする必要性があるんでよね。
一方で金属切削の場合は、データ通りに機械が切り抜いてくれるので、変形の心配や収縮率を見越したデータ作りをしなくても、そのままのサイズで出来上がってきます。
鋳造をする時間と後処理の作業を短縮できるのもメリットと言えますね。
(※2)鋳造=原型を石膏で型取りをし、その中に溶けた金属を流し込んで制作する手法。圧縮されるため、実寸よりも収縮する特性がある。
ーーということで、さっそく切削加工をして行きますね!
まずは加工データを設定して機械に読み込んでもらいます。今回は、切り抜き加工と凹み加工を選択しました。
材料を機械にしっかり固定して、潤滑液を出したら準備完了!
金属切削の場合、摩擦熱が発生するために潤滑液をかけながら作業をしないと、先端工具が折れてしまうので必ず流しながら加工をして行きます。
それではいよいよ機械が動いていきますよ!
機械が動き出しました。
開始約15分の状態。だんだんと完成形が見えてきました。
じーーっと見つめる斎藤さん。釘付けです。
ーーこちらが今回の斎藤さんが作ったデータと、仕上がった商品パーツです!矢印が好きなんですね!
切り抜き終わった後は板に繋がっている状態なので、少しだけ糸鋸の刃を通してあげたり、指で軽く押してあげて板から切り離していきます。
切り離した後は、軽く刃で削った部分を滑らかにするためにやすり掛けと研磨を行って完成です。
初めて金属切削の流れを体験してみていかがでしたか?
切削で作った線データは本当にそのまま金属になって出来上がりました!
切削だったら、繊細にもっと細く作ってもよかったなと感じました。
そして(※3)巣もなくとても仕上がりも綺麗でした!
切削加工の説明やどんな風に出来ていくのかも教えてもらい、先生と相談しながら作品が出来たので安心でした!
(※3)巣=鋳造で溶けた金属を流し込む際に空気の気泡が入ったまま固まること
ーーありがとうございます!こういったデザインは直接金属から削り出す分、ここまで薄く細いデザインでも鋳造品とは違い材料自体も圧縮されて強いので硬く強度もあるんです。
ーー斎藤さんはCADデータが作れるので、今後もこういったデザインが作りたい時には是非金属切削の事も考えながら作ってもらえると嬉しいですね!
絶対切削はリピートします!
クオリティも高く、作りたいデザインが切削に向いてるなと感じたものはどんどん切削で作っていくと思います。
線データからすぐに金属になるのも魅力です。
デザインによって作り方を変えて、その中に切削という選択肢が増えて表現が増えると感じました。
ーーいいですね!デザインによってはかなりスムーズに進んでいくと思いますよね。
これからも切削機を上手に使って商品作りに活かしてくださいね!楽しみにしています!
最後に
金属切削のメリットは、思い描いていた通りにクオリティの高い商品を作り上げる事が実現出来るという事です。
特に今回のようなデザインの場合は、工程と仕上がりの面で金属切削が向いていましたね。
ここで簡単に注文の流れを入れておきます。
・まずライノやイラストレーターなどで線データを用意して下さい(立体のCADデータにする必要はありません。)
・そのデータを持って打ち合わせをし、必要なサイズと金額をお伝えするので地金を用意して貰います。
・内容が確認できたら加工に入り2週間ほどで出来上がって来ます!
今回の納期は2週間で、1.0mmの厚さの真鍮板4つ分の材料費は¥600-で加工費が¥ 7,800-でした。
データはライノセラスの線データを使えるので、CADを始めたばかりの生徒さんでもすぐにオーダーする事が出来るのでぜひ一度は試してみて下さいね。
ラヴァーグでは生徒さん達が目指すクオリティーの高いモノづくりが出来る環境を整えています。切削だけではなく他のサービスもうまく使い、効率的に自身の商品作りに活かしてもらいたいと思います。
切削について、詳しく知りたい方はこちらもチェックしてみて下さい。