LaVague  東京の彫金教室・Lavague Jewelryスクール【東京・渋谷区・恵比寿】

I/VVORY 好きの理由を探しながら、生まれていくカタチ ~内田真里南~

インタビュートップ画像
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I/VVORY Interview

生活環境の変化をきっかけに、自分が本当に好きなものは何か、自分にとっての ” 理想と現実のバランス ” とは何かを見つめ直した内田真里南さん。

手作業でのジュエリー制作からiPad CAD、そして本格的なRhinocerosでのCADを習得。デザイナーズフェスタの出展を機に、日常で身につけたくなるデザインを追求する彼女の制作の軌跡をたっぷりお聞きしました。
I/VVORYのデザイナー内田さん

I / VVORY デザイナー プロフィール

幼少期をアメリカで過ごし、実家は神社という伝統と異文化が交わる環境で育つ。
エッグアートにたずさわる母の影響を受け、子どものころから創作を通して自分を表現することに惹かれてきた。大学や就職では創作とは無縁の道へ進んだが、結婚をきっかけに自分の興味をあらためて見つめ直し、ジュエリー制作をはじめる。
彫金から学び始めたのち、より自由に思い描く形を表現するためジュエリーCADを習得。
仕事と両立しながら学びをつづけ、2025年6月にラヴァーグCAD総合コースを修了。

現在は CADモデリングをし、家庭用光造形機での試作を行いながら、細部までこだわった造形美を追求し、シンプルなデザインの中に凛とした印象を宿す作品づくりを大切にしている。

2025年にはデザイナーズフェスタへも出展。世界観づくりからディスプレイ、撮影まで自身で手がけ、ブランドの空気感を丁寧に形にされた。
「今の自分を大切にしながら、理想を思い描く気持ちも大切にしたい」——
そんな想いを込めて、ひとつひとつの作品を制作している。
I/VVORYのデザイナー内田さん
インタビュアーの講師竹田

取材した講師:竹田 智美

デザインの専門学校でグラフィックデザインを学び、前職ではメンズファッションアイテムのデザイナーとして実績を積みながら、LaVagueで生徒としてジュエリーメイキングを学ぶ。その後、その実績と人柄が評価されLaVagueでCAD講師をしている。

ジュエリー制作をはじめたきっかけ

--本日はお時間をいただき、ありがとうございます!
早速ですが、ジュエリー制作を学ぼうと思ったきっかけは何でしたか?
ジュエリー制作を始めたのは2018年です。前年に親元を離れて一人暮らしを始め、2018年には結婚して新しい生活をスタートさせました。
これまでは知らず知らずのうちに親や周囲の価値観に影響されながら進学や就職を選んできたのですが、環境の大きな変化をきっかけに、本当に好きなもの、やりたいことは何かを考えるようになりました。
I/VVORYのデザイナー内田さん
--環境の変化をきっかけに、やりたいことについて自分と向き合われたんですね!
そこでジュエリー制作を選ばれたのは?
振り返ると、子どもの頃から何かをつくったりすることが好きで、美術の時間が最も好きでした。中学・高校では文芸部、大学では映画制作サークルに所属し、表現を形にする活動に関わってきました。
ものづくりの中でも、ジュエリーであれば実際に身につけられるという点で実用性があるところ、趣味と実益を兼ねられる点に魅力を感じました
I/VVORYのデザイナー内田さん

彫金からジュエリーCADへ

--ジュエリー制作を始められたときは、他校の彫金教室から始められたとのことですが、いかがでしたか?
2018年から御徒町にある彫金教室に通い始めました。その頃からラヴァーグの存在は知っていましたが、当時はそこまで本格的に学ぶつもりはなく、手軽に始められる月謝制の教室を選びました。

その彫金教室は講師と相談しながら自由に自分の作りたいものを制作するスタイルでしたが、私には自由度が高すぎて合わなかったように思います。
先生が一人で、自身の作業をしていることも多く、気軽に質問しにくいのも悩みでした。
また、不器用さや忍耐力のなさもあり、地金やワックスでは自分が作りたいデザインをなかなか作れない悩みもありました。
--そうだったんですね。
そこからラヴァーグに改めて目が向いたきっかけは何だったのですか?
I/VVORYのデザイナー内田真里南さん
iPadで使えるCADを知り、それまで手こずっていた左右対称なデザインなどを形にしやすい点に魅力を感じました

その後ラヴァーグのiPad CADの通信講座も受講して、とても良かったのですが、iPadのCADではデザインに限界もあり「本格的にCADを学びたい」という思いが強くなっていきました
--iPadでのCADのモデリングについて学ばれたんですね!
デザインの限界を感じられたのはどんな部分ですか?
パソコンのCADソフトRhinocerosで作成したものと、iPadで作成したものとで見比べると、リングを真上から見たときの形状を楕円状にしたくても、iPadだと円状になってしまうんです。
あとは、断面部分に丸みをつけられなかったり・・・
なんといいますか、iPadCADだとかゆいところに手が届かない感じがありました。
iPadCADとRhinocerosとを比較
--確かに見比べると違う!これは実際やってみないとわからないですね。
対談の様子
iPadCADとRhinocerosとを比較
ジュエリーCADについて語る内田さん
--そして、ジュエリーCAD総合コースを受講して、RhinocerosのCADを一から学んでいかれたんですね。
ジュエリーCADについて語る内田さん
すでにiPad CADの講座で信頼できると感じていたこと、通いやすい立地であること、自分のペースで学べる環境が整っていることから、CADを学ぶならラヴァーグだと感じていましたが、安くない金額なのでしばらく迷っていました。

料金面以外での不安としては、幾何学的なデザインに適している印象が強かったので「CADが自分のつくりたい方向性と本当に合っているのか」というものがありました。
また「CADはとても難しそう」というイメージもあり、合わなかったらどうしようという不安もありました。

最終的には、見学のときに教材と試作品を見せていただき、CADでさまざまな表現が可能であること、テキストがわかりやすく充実していることから納得して入学を決めることができました
--私もCADを学ぶ前は難しいイメージがありましたが、テキストの分かりやすさと、いつでも見返せることは、学ぶ上でとっても大きいと思います!
I/VVORYのデザイナー内田さん
--実際にラヴァーグのジュエリーCADを学ばれて、いかがでしたか?
以前通っていた彫金教室では先生が不在のことも多く、遠慮してなかなか質問できませんでしたが、講師の方が複数いらっしゃり、分からないことをすぐに質問できる環境が整っているので、この環境は大きな魅力でした。

一方で、同じ内容を尋ねても講師によって少しずつやり方が違うこともあったりして、最初は戸惑うこともありましたが、正解が一つではなく、それぞれが試行錯誤しながら制作しているのだとわかるようになり、今思うとむしろそれが良かったのだと感じています。
--なるほど、以前の環境とは大きく違って” いつでも質問できる環境 ” が安心と、先生方から様々な手法も聞けることも利点だったんですね!

パソコンでのCADを学んで、自分がイメージする形にやっとできたなって実感が生まれたのは、どのタイミングでしたか?
本当に早い段階で、それこそLesson1の月甲丸リングです。” 太さを変える ” というのが、どうしてもiPadCADだとできなかったので「すごい便利じゃん!」って思いました!

シンプルなデザインが好きなので、基本的なコマンドだけでも、割とできるんじゃないかなって思うほどでした
I/VVORYのリング
--Lesson1の課題からiPadCADの限界を超えたんですね!これは嬉しい!
両方やったからこその実感できることですが、再現性やスピード感を考えるとRhinocerosなんですね!
I/VVORYのデザイナー内田さん
I/VVORYのリング
I/VVORYのジュエリー
--ジュエリーCADコースを全課題やられて、CADの授業や課題で ” 特に印象に残っていること ” はありますか?
CADの授業の流れもよくできていて、テキストに沿ってデータを作成し、それまで学んだスキルを応用しながらオリジナル作品を仕上げるという構成が、知識の定着と応用力の習得に非常に役立ったと感じています。

私はCADを早く習得したい気持ちが強く、オリジナルの仕上げを疎かにしてしまった部分もありましたが、しっかりと取り組めばCAD総合コースだけでデザインから仕上げの技術までかなり身につけられると思いました。
一番難しかった課題で印象に残ったのは、L20のオリジナル課題として制作したパヴェリングです。
データ作成はテキストや先生の指導のおかげでスムーズに進みましたが、本当に石留めが大変で、数ヶ月頑張ったのですが、デザイナーズフェスタの作品作りを優先したこともあり、結局まだ完成に至っていません。

CADの便利さを実感する一方で、 CADだけでは完結しないこともわかり、本当にジュエリーは奥深い世界だと思いました。
--授業の流れが自分に合っていて、スムーズに技術が身についた感じですね。
パヴェリングもめちゃくちゃ根気がいる作業なので、数ヶ月取り組んだだけでも本当にすごいと思いますし、得られたものも大きかったと思います!
I/VVORYのジュエリー

ジュエリー制作での変化

--CADの便利さと、実際の仕上げ作業の難しさ、その両方をしっかり体験されていて、よりジュエリー制作の魅力を深く感じられたんじゃないかなと思いますが、ジュエリー制作においてジュエリーCADを使えるようになり、どのような変化がありましたか?
CADを取り入れたことで制作が気軽になり、自分のペースで自由にアイデアを形にできるようになりました
現在は、CADでモデリング → 家庭用3Dプリンターで試作 → 修正 という工程を繰り返しながら制作を進めています。デザインはシンプルなものが多いですが、その分バランスやサイズ感など細部にこだわり、納得いくまで微調整しています。

仕事や子育ての合間に、短い時間を活用して制作できるのがCADの大きな利点だと感じています。
以前はワックス作業を自宅でするのが大変でしたが、今は隙間時間で制作でき、短期間で試作と改善を繰り返せるので、今の生活スタイルにとても合っていると思います。
--制作のスタイルがご自身の生活にちゃんと馴染んでいるのがすごく素敵ですね!スキマ時間でアイデアを形にできたり、何度も試作を重ねて細部までこだわれるのって、まさにCADならではだと思います。
--天然石を使用されたジュエリーもありましたが、作ってみていかがでしたか?
ワックスでカボションのジュエリーを作ろうとしたことも昔はあったのですが、丸い形状ならなんとかできたんですけど、楕円など丸以外の形状は全然作れなくて。

そもそも楕円の形にワックスをうまく穴を開けてとか、爪を作るのに均一な細さや厚みにして、ワックスペンで加工するというのがどうしても苦手でした。
I/VVORYの天然石リング
--手作業ならではの難しさがあったんですね。
ですが、CADだと石枠作るのは一瞬なので、もう本当に素晴らしい!作れる幅がもう一気にバーっと広がったという感じですね。
本当にCADをやって良かったなって思います。
--ジュエリー制作技術の幅が広がったからこそ、カタチにできるものも増えていったんですね!
作りたかったものが作れるようになって、私達も嬉しいです!
I/VVORYの天然石リング

出展に向けた商品作り

--新たな挑戦としてデザイナーズフェスタの出展をされましたね!
CADの講座も終盤にさしかかっていて ” ここで一歩踏み出さなければ ” という思いがあったので、デザイナーズフェスタの告知があったその日に出展を決めました。
どうせ挑戦するなら、より多くを学べる環境に身を置きたい、自分なりの世界観を表現してみたいと考え、セレクトブースではなくブランドブースでの出展を選びました。

とはいえ、ブランドブースで出展するからには、これまでCAD講座で作ってきたものや、入学前に制作していたものを並べるのではなく、自分が本当につくりたいジュエリーとは何か、その軸をきちんと考えて、一からアイテムをつくりたいと思いました

そのぶん時間的な不安もありましたが、自分にとって大きな挑戦になるからこそ、得られるものもきっと大きいだろうと感じていました。
I/VVORYのデザイナー内田真里南さん
-- ” 自分が作りたいジュエリーを1から作成された “とのことですが、どのような想いを込めらたんですか?
ブランドブースで出展するにあたり、自分がつくりたいジュエリーについて改めて考えた結果、「会社員や母親として生活する中でも日常的につけられるデザインでありながら、少しだけ特別感があるようなもの」だと思いました。

I/VVORYのコンセプトとして、「少しだけ背筋がのびる特別なもの」「理想を思い描く気持ちと、今の自分を大切にする気持ち。その両方にそっと寄り添うジュエリー」を掲げていますが これは自分自身の思いと重なっています。

理想と比べてまだまだダメだと自分を追い込んでしまう一方で、日々の雑務や忙しさに流されて向上心すら持てないこともある。そうした両極端な自分に対し、「今の自分を肯定して、何気ない幸せを大切にすること」と「理想に向かって努力を続けること」の両方を大切にしたい

まだ言葉として整理しきれてない部分もありますが、人に共感していただける形で伝えることも今後の課題かなと思っています。
--ブランドのコンセプトにもなっている「 ふと背筋が伸びるようなささやかな特別感 」、その背景には、理想を追い求めて自分を追い込んでしまう自分と、忙しさに流され向上心を保てない自分という、心の揺れや葛藤があったからこそ、生まれたものだったんですね!
” 今の自分を大切にしながら、理想にも向かっていく ” というメッセージは、きっと多くの方の共感を呼ぶと思います。
--ブランドのコンセプトにもなっている「 ふと背筋が伸びるようなささやかな特別感 」、その背景には ” 理想を追い求めて自分を追い込んでしまう自分 ” と ” 忙しさに流され向上心を保てない自分 ” という、心の揺れや葛藤があったからこそ、生まれたものだったんですね!

” 今の自分を大切にしながら、理想にも向かっていく ” というメッセージは、きっと多くの方の共感を呼ぶと思います。
I/VVORYのデザイナー内田真里南さん
--では、ジュエリーのデザインで意識されたことは?
” 日常的につけられるデザイン ” を考える中で、やっぱり自分が身に着けたいものを作るのがベストだなって思って。

というのは、自分が使ってて「なんか使いたくない」なみたいなものを人に提供するのってどうなのかなって思ったんです。特別なオケージョンのときにだけ身に着けるものとかでもなく、本当に普段の日常の中でたくさん自分が使っててイイものを作りたかったんですね

洋服とかでもそうで、たまにしか着ないようなデザイン性のある洋服よりは、週三ぐらいで着れて、ちょっと質が良くて着ると気分が上がるような、そういう服を最近選ぶようになってきたので、そういうのが多分ジュエリーにも反映されたのかなって思います。
--たしかに、自分が心から良いと思えないものを人に届けるのは違和感がありますし、日々使いたいと思えるジュエリーだからこそ、生活に自然と馴染むと思いました。
洋服の例えもとてもわかりやすくて、特別な日だけでなく ” 週に何度も身につけたくなる心地よさや質の良さ ” が、デザインに反映されていたんですね!
I/VVORYのデザイナー内田真里南さん
I/VVORYのブランドロゴ
I/VVORYのu ring
--使いやすいシンプルなデザインでありながら特徴もありますよね!
I/VVORYのブランドロゴ
シンプルなデザインが好きなんですが、個人的に無難なものってあまり好きじゃないので、ちょっと面白いものを作りたいなって思ってます。

ブランドのロゴマークはデザイナーさんに依頼して作成していただいたものなのですが、正円ではない半円のシルエットが、さりげない個性や特別感を表すデザインになっています。
さらに半円の内側には、ブランド名が由来する象牙をイメージしたラインも組み込まれていて、すごいいいなって思ってたんですね。

そのロゴをイメージしたものが、この半円のリングです。今一番気に入っているリングで、普段もつけているものなんです。
--デザイナーズフェスタのときのお写真のリングですね!
ロゴマークの半円がイメージされていたとは、面白いですね!
でも最初はそういう形ではなくて、とりあえず半円を作って、光造形でカタチを出したんですが、なんかあまりにもシンプルすぎるなぁって・・・そこから試行錯誤をしたんです。
家用の光造形機があるので、いろいろ太さなどを変えて、15回くらいでカタチが完成しました。
I/VVORYのu ring
--思い描くカタチにするために試行錯誤を繰り返し、光造形でカタチや着け心地を確認しながら作られたんですね!
内田さんがジュエリーデザインに対する熱意をとても感じます!
--他の作品もジュエリーデザインのイメージがしっかりあったからこそ、共通するデザインを感じますね!
そうですね、このオープンリングも着けると全然奇抜にならず、サラッて身に着けられるシンプルさですとか。
--チェーンがつくことで、繊細さも感じますね。
open chain ring や u ring の腕部分が徐々に細くされているのは、何かをイメージされているんですか?
I/VVORYのオープンリング
細くしてるのは、古い建物とかが好きなので、ちょっとヴィンテージ感を表現したかったんです。

目黒にあるアール・デコの粋が集約された建築の東京庭園美術館を見に行ったときなんですが、旧朝香宮邸にある洗面台の足がちょっと猫足っぽいというか、上に膨らみがあって徐々に細くなるフォルムが綺麗だなって思ったんです。
それを反映したデザインになります。

上から見たときに腕の下の部分が見えるとちょっとカッコ悪いので幅を変えたんですが、本当にCADがなかったら絶対私は作れなかったと思います。
WAXだと左右対称にするのが難しいので。
--美術館やアートから美しさを見つけ出して、デザインに活かすって素敵ですね!
その美しさをより忠実に表現できたのは、ジュエリーCADだからこそですね!
I/VVORYのジュエリー
I/VVORYのジュエリー
I/VVORYのオープンリング

大きな学びとなった5ヶ月間

--展示会準備で特に大変だったことはなんでしたか?
出展すると決めてすぐに制作を開始しましたが、とにかく時間との闘いでした。

仕事をしていて、小さい子供もいるので、深夜や早朝に時間をつくって作業をしていき、いくつか平行してCADで制作しては自宅の光造形機で出力し、少しずつ改良を重ねていきました。
磨きは割り切って全て外注したのですが、思い通りの仕上がりにならなかったり、そういった難しさもあるのだとよく分かりました。
I/VVORYのリング
--具体的に外注でのやり取りで、どのようなことに苦戦されましたか?
御徒町に平日に行くのが難しいので、基本的にはネットの依頼フォームなどのメールで依頼をしていたんです。

例えば、ネックレスやリングなどの一部分の仕上がりで、両端にモチーフがある形状だったので磨くのが難しかったのか、スーッと綺麗に滑らかな仕上がりではなく、段差があるような仕上がりだったことがありました。

あとは、最初は綺麗な仕上がりだったものでも、同じところにもう一度依頼したら溝部分の仕上がりが荒い状態ときもありました。

職人さんにも様々な方がいるので、依頼するにしても全部任せるのではなく、注意してほしいところはしっかり伝えることが大事だと思いました。
--なるほど。再度仕上げ依頼するにも、その分時間もかかってしまうので、自分が望む仕上がりを的確に伝えてあげることが重要ですね。
I/VVORYのリング
また、作品づくりと並行して、ロゴの制作やパッケージの発注も進め、作品が形になってきた4月以降は写真撮影にも力を入れました。
作品そのものだけでなく、ディスプレイや写真での見せ方まで含めて、一つの世界観をつくり上げていく過程は、忙しくも楽しい時間でした

大学時代に映画制作をしていたときは、監督として脚本から撮影、編集まで全体に関わっていたのですが、そのときの感覚を思い出し、改めてこうした表現の過程が好きなのだと感じました。
--ロゴやパッケージ、撮影まで含めたブランド全体の世界観づくりに取り組まれてきたとのことで、その流れの中に映画制作のご経験が今の活動にも自然と生かされているのが、とても素敵だと感じますね!
--世界観つくりの一つとしてディスプレイとありましたが、工夫したことやこだわりを聞かせてください!
作品数が少ないので、余白を活かせるようなディスプレイを意識しました。
作品のデザイン自体はシンプルな分、ディスプレイ全体で空気感を伝えられたらと思い、InstagramやPinterestで参考になるような画像を見たり、実際にジュエリーを売っているお店の展示などを参考にしました。

その甲斐もあり、展示会ではディスプレイについて、たくさんの方から「印象に残った」と評価していただけたのがとても嬉しかったです!

また、ブランド名の由来や込めた思いは、自分の言葉だけではうまく伝えきれないと考え、説明を印刷してブランド名札の横に置き、それも来場者に好評で、ブランドへの理解につながったと感じています。
--シンプルなデザインだからこそ、空気感や世界観をディスプレイ全体で表現しようとされた点がとても素敵ですね!ブランド名の由来を説明として添えたことも、世界観の理解を深める良い効果があったのだと思います。
I/VVORYのディスプレイ

初めての展示会

--時間に追われながらも準備をされて、展示会当日を迎えられましたが、当日の雰囲気とか印象に残っていることとかどうでしたか?
そうですね、初日は平日でしたし「 正直たぶん誰も来ないかなー」って、 ちょっとのんびりスタートしていこうっていう気持ちだったのですが、展示会の当日は開始してすぐに、協賛企業の方々が続々と入られてびっくりしました!
結構緊張しましたね。
--それは緊張しますよね!
全然そういう経験がなかったので、「 あ、こういう感じなんだ 」って、びっくりしましたね。
慣れないこともあり、当日は一日中会場にいるだけで少し疲れてしまった部分もありましたが、今思うと、もう少し来場者の方との交流を純粋に楽しむ気持ちを持てたら良かったと思います。また、どちらかというと控えめな接客が好きなので、どこまでブランドや作品のことを説明したらいいのか迷う場面も多かったですね。

でも、当たり前のことでもありますが、こちらから説明しないと伝わらないのだということも改めて実感しました。なんとなく目にとめてもらった状態から、本格的に興味を持ってもらうには、接客がとても大事なのだと実感する機会になりました
対談の様子
--緊張する中で接客もされて大変だったと思いますが、出展されている他のデザイナーさんたちとのエピソードなどありますか?
ブランドブースで出展することで ” ジュエリーは生活必需品ではない ” からこそ、買う理由や共感できる価値を感じてもらうことが大事だとよくわかりました。
私はもともと、見た目など感覚的にいいな、と思ったら買ってしまうタイプだと思っていましたが、実際はそのブランドのストーリーや世界観、価値観に無意識に共感していた部分も大きかったのだと気づきました。

展示会の合間に講師の方々とお話しする中で「 なぜそのアイテムをつくったのか 」「 なぜその形にしたのか 」を明確に伝えられると大きな強みになると感じました。今回の作品づくりでは、自分の「好きな感じ」を直感的に形にすることはできましたが、今後は一歩進んで、その感覚の奥にある理由まで言語化し、伝えられるようになれたらいいなと思います。
--出展を通して、“ジュエリーを買う理由”や“共感してもらう価値”の大事さに気づけたのは、本当に大きな経験ですよね。ブランド商品のコンセプトはしっかり持たれていると感じるので、今回の経験で、より制作にもきっと活きてくると思います。
I/VVORYのデザイナー内田さん
その意味ではfurarreさんの作品は、一つひとつの作り込みが丁寧で、コンセプトやストーリーをしっかり語れる強さがあり、刺さってほしい人に強く届くブランドだと感じました。

また、左隣で展示されていたTYD jewelryさんが、すでに様々なイベントに参加されている方だったので、天然石を使った1点もののリングを製作する上での工夫から、ディスプレイ、接客の流れまで、勉強になることがとても多かったです。
--それはとても良い刺激にもなりましたね!展示会での出会いと経験がしっかり次につながっていくと思います。
I/VVORYのデザイナー内田さん
I/VVORYのディスプレイ
--商品のコンセプトや世界観の重要性のお話しがありましたが、他にも感じた改善点などはありましたか?
I/VVORYのディスプレイ
やはり、接客の準備をもう少ししておけば良かったと思います。流れるように話すことはできなくても、ブランドのコンセプトやアイテムの魅力をもっと自分の言葉で伝えられるよう、ある程度整理しておくべきでした

例えば、組み合わせだとか、つけるアレンジの仕方とか、アイテムの展開とかもそうですし、あとは見てくださった時に「 もっとこういう風に着けるといいですよ! 」という提案ができるといいのかなって思いましたね。

また、次に出展する機会があれば、アイテムのラインナップをもう少し増やしたいです。

初出展での受賞について

表彰式の様子
表彰式の様子
--初めての出展で、一般投票8位、そして協賛企業の株式会社田邊研電様からの受賞となりましたが、本当におめでとうございます!
率直に受賞されていかがでしたか?
来場者の方の一般投票で8位に入賞できたことも嬉しかったのですが、ジュエリー業界に携わる方から評価していただけたことは、特に大きな励みになりました。

田邊研電様からは、選出理由として「 ” 少しだけ背筋がのびる特別なもの。けれど、普段から身につけられる安心感のあるもの。 ” という想いに共感した 」とお言葉をいただき、作品を通して表現したかったことをきちんと受け取っていただけたように感じました。
そうした形で想いが伝わったことが本当に嬉しく、自分の方向性に自信を持てるようになりました。
--一般投票の入賞もすごいですが、業界の方から直接言葉をもらえたのは、ほんとに励みになりますよね!
” 特別感と日常性のバランス ” という、ブランドとして大切にされている軸が他者に届いたという事実は、これからの制作活動にとって大きな支えになると思います。

今後への展望

--デザイナーズフェスタに出展され、今後のブランド活動や制作にどう活かされていきそうですか?
一番良かったのは、ブランドとしての軸がある程度定まったことです。
どのようなジュエリーをつくっていきたいのか、自分の中で大切にしたい方向性や世界観が少しずつ明確になってきたように感じています。
I/VVORYのデザイナー内田真里南さん
--今後、挑戦してみたいことはありますか?
基礎的な技術を深めるための彫金や、ハイジュエリー、天然石の研磨などにも興味がありますが、学び始めるとキリがないとも感じています。まずは今自分が持っているスキルで様々な作品を作って、ラインナップを増やしていきたいです。
しばらくはシルバーがメインになるとは思いますが、K18やダイヤなどを使用した上質なアイテムも少しずつ展開していきたいです。

また、別の方向性として、天然石を使った一点もののリングにも関心があります。展示会に向けてカボションを留めたシンプルなリングをいくつか制作しましたが、今後はさまざまな留め方やデザインにも挑戦してみたいです。
軸がある程度定まってきたとは言っても、興味のあることが多いので、これからもきっと迷ったり、ぶれたりすると思います。 その時々の感性も大切にしながら、自分らしい表現へとつなげていけたらと思っています
基礎的な技術を深めるための彫金や、ハイジュエリー、天然石の研磨などにも興味がありますが、学び始めるとキリがないとも感じています。
まずは今自分が持っているスキルで様々な作品を作って、ラインナップを増やしていきたいです。
しばらくはシルバーがメインになるとは思いますが、K18やダイヤなどを使用した上質なアイテムも少しずつ展開していけたらと思っています。

また、別の方向性として、天然石を使った一点もののリングにも関心があります。展示会に向けてカボションを留めたシンプルなリングをいくつか制作しましたが、今後はさまざまな留め方やデザインにも挑戦してみたいです。

軸がある程度定まってきたとは言っても、興味のあることが多いので、これからもきっと迷ったり、ぶれたりすると思います。
その時々の感性も大切にしながら、自分らしい表現へとつなげていけたらと思っています
I/VVORYのデザイナー内田真里南さん
I/VVORYのディスプレイ
--では最後に、これからジュエリー制作を学びたい方へ、どんなことを伝えたいですか?
自分の経験からのアドバイスもお願いします!
私もまだまだなので偉そうなことは言えませんが、最近あらためて感じるのは、最初から決まった道があるわけではないということです。
手作業で一からコツコツつくる人もいれば、CADでデザインに集中する人もいる。技法もさまざまで、本当に奥が深い世界だと思います。大事なのは、「自分が何をつくりたいか」という、自分の興味や感性を中心におくことだと思います。
そのうえで、自分のつくりたいジュエリーに必要なことを学んでいけば、自然と、自分だけの表現が見えてくるのだと思います。

私も含め、挑戦することに尻込みをするのは、「 うまくいかなかったらどうしよう、失敗することをこわい 」と思う気持ちがあると思います。

でも大丈夫です!いい意味で、必ず失敗します。最初からうまくいく人なんていません。
挑戦すれば、結果がどうであれ必ず学びがあり、それが次の一歩につながります。挑戦しなければ得られるものはゼロになります。
少しでも興味があるなら、ぜひ一歩を踏み出してみてほしいです。
私もまだまだなので偉そうなことは言えませんが、最近あらためて感じるのは、最初から決まった道があるわけではないということです。

手作業で一からコツコツつくる人もいれば、CADでデザインに集中する人もいる。技法もさまざまで、本当に奥が深い世界だと思います。
大事なのは、「自分が何をつくりたいか」という、自分の興味や感性を中心におくことだと思います。

そのうえで、自分のつくりたいジュエリーに必要なことを学んでいけば、自然と、自分だけの表現が見えてくるのだと思います。

私も含め、挑戦することに尻込みをするのは、「 うまくいかなかったらどうしよう、失敗することをこわい 」と思う気持ちがあると思います。
でも大丈夫です!いい意味で、必ず失敗します。最初からうまくいく人なんていません。

挑戦すれば、結果がどうであれ必ず学びがあり、それが次の一歩につながります。挑戦しなければ得られるものはゼロになります。
少しでも興味があるなら、ぜひ一歩を踏み出してみてほしいです。
--とても力強く、そして優しいメッセージをありがとうございます!
ジュエリー制作の道が一つではなく、技法や進め方もそれぞれ違っていていいという言葉は、これから学び始める方にとって大きな励みになると思います。「自分が何をつくりたいのか」を軸に進んでいけば、自分にしかできない表現に自然と近づいていく——その気づきは、本当に貴重ですね。

挑戦することでしか得られない学びがあるという実感は、これから新しい一歩を踏み出そうとする方にとって大きな支えになるはずです。

内田さんの言葉から、作品づくりへのまっすぐな気持ちと、挑戦を楽しむ姿勢が本当に伝わってきました!
ここから先、どんな世界観が広がっていくのか、とってもワクワクしています。
これからのご活躍、心から応援しています!
I/VVORYのジュエリー
I/VVORYの商品とロゴ

I/VVORY

少しだけ背筋がのびる特別なもの。
けれど、普段から身につけられる安心感のあるもの。
目にするたび、心の奥にある理想が輪郭を帯びていく。

I/VVORY(アイボリー)は、
やさしく日常に溶け込む自然な白〈ivory=白色〉と、
意志ある美しさを持つ素材〈ivory=象牙〉の二つの意味に由来しています。

理想を思い描く気持ちと、今の自分を大切にする気持ち。
その両方にそっと寄り添うジュエリーです。

ー受講コース紹介ー

内田真里南さんが受講されたコース一覧です。今後のスキルアップの参考にしてみてください!
画像をタップするとコース詳細が見れます!
ジュエリーCADコース

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