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彫金工具の選び方・特性について-ヤスリ編-

彫金工具「ヤスリ」
「彫金」とは本来、その名前の通り金属を彫って(切って削って)ジュエリーを製作する技法のことを指しますが、型を作って溶けた金属を流し込む「鋳金」や金属を叩いて形作る「鍛金」など様々あるジュエリー制作の技法をひとくくりにして彫金と呼ぶことも多くなりました。

そんな彫金、ジュエリーを制作するのには様々な道具、工具が使われます。今回はそんな彫金工具の中でも「ヤスリ」についてピックアップしてご紹介します。

ヤスリの特性を知ってしまえば、今のジュエリー制作が何倍も綺麗に、早く、そして効率よく作業することが出来るようになります。

この記事をきっかけに、あなたに合ったヤスリを見つけてもらうための参考になれば嬉しいです。

彫金でヤスリを使用する場面は?

そもそも彫金でヤスリを使用する場面にはどんなものがあるのか?
ヤスリは主に地金(金属の棒や板など)を削り出して好きな形にしたり、整えたりする時に使用します。
ヤスリには必ず粗さの種類が決まっていて、用途に合わせて選びます。
粗いものから細かいものへの順番でかけていくのが基本です。

彫金で使用するヤスリの種類には何がある?

ヤスリと一言で言っても、とにかく沢山の種類があります。
この技術では絶対にこのヤスリを使わないといけない、というルールはありませんが、それぞれの特性によって向き不向きがあります。
ジュエリー制作でよく使われるものを使用用途と一緒に解説していきます。

彫金で使用するヤスリ① ー 紙ヤスリ(ペーパーヤスリ・サンドペーパー)

紙に砥粒を塗布したもの。(紙の代わりに布製のものもある)
これは知ってる。見たことある。という人も多いのではないでしょうか。
紙ヤスリは汎用性が高く、工夫次第で応用が利かせやすいため、彫金、ジュエリー制作で頻繁に使用します。
基本的には裏側に数字が記載されていて、数字が小さければ小さいほど目が粗く、大きく形を変えたい時やジュエリーに付いた大きな傷をとりたい時などに使用します。
逆に数字の大きな紙ヤスリは目が細かくなり、粗いヤスリでついた傷を消したり、表面をなめらかにするために使用します。

例)#320(粗) → #1000(細)

≪主な使用用途≫

彫金工具「紙ヤスリ」
紙ヤスリの裏には数字が書いてあり、これが粗さを表しています。

彫金で使用するヤスリ② ー スポンジヤスリ

スポンジに紙ヤスリと同様、砥粒を塗布したもの。
紙ヤスリと似てはいますが、粗さが細かく設定されていません。
例)#320~#600程度と表記されています。

もちろん彫金でも使用しますが、紙ヤスリよりも柔軟性がありやわらかいので曲面などが磨きやすいため、銀粘土やロストワックスなどの技法で作るジュエリーを研磨する際によく使用します。

≪主な使用用途≫

彫金工具「スポンジヤスリ」
ロストワックスや銀粘土などによく使われるスポンジヤスリ

彫金で使用するヤスリ③ ー ダイヤモンドヤスリ

様々な形状の金属の棒にダイヤモンド砥粒を塗布したもの。
鉄工ヤスリでは削ることが困難な金属などに使用します。(超硬金属や一部のステンレスなど)
そのため、彫金作業そのものだけでなく、作業で使う工具の加工にも使用されます。
小ぶりなものも沢山あるので、細かな部分の研磨に使うことも多いです。

≪主な使用用途≫

彫金工具「ダイヤモンドヤスリ」
ダイヤモンドヤスリ

彫金で使用するヤスリ④ ー 鉄工ヤスリ(全ヤスリ)

棒状の鋼などに目立て(細かな切れ込みを入れてたくさんの”ささくれ”を作っていくイメージ。粗いほど大きく削れ、細かいほど削れる量が少なくなっていきます。)
彫金工具の代表格でもあり、ジュエリー制作においてメインで使用するのがこの種類のヤスリ。

紙ヤスリの粗さは数字で表記されていて細かくいくつもの番手がありましたが、鉄工ヤスリには4種類の粗さがあり、
荒(粗)目(あらめ) → 中目(ちゅうめ) → 細目(さいめ)→ 油目(あぶらめ)
の順番で細かくなっていきます。
彫金ヤスリ(あらめ)

荒(粗)目

彫金ヤスリ(ちゅうめ)

中目

彫金ヤスリ(あぶらめ)

油目

彫金で使用する鉄工ヤスリについて

彫金で使われる鉄工ヤスリにも実は色々な種類があります。まず大きく分けて3種類に分けます。

インチヤスリ

大きめのヤスリの事です。インチサイズ(1インチ=2.54cm)で表記されます。
このヤスリには持ち手がないので別途専用の柄が必要になります。
柄がつくことにより表記されている長さより長くなるので注意!

6.8.10インチあたりがよく使用されます。

大きさの選び方として、手をパーにして親指と小指の長さを参考に、自分の手の大きさに合わせたものを使用すると良いでしょう。

組ヤスリ

鉄工ヤスリのなかで一番使われるのがこの組ヤスリです。
この「組」というのは「セット」という意味ではなく、”大きさ”を表しています。
独特の表現なのでわかりにくいですが、”決まった量の鋼から何本のヤスリを作れるのか”というのが指標となっています。
1つの鋼から10本作れば10本組といった具合です。
なので、組数が大きくなるとヤスリの大きさは小さくなるのです。
もちろんこの組はセットという意味では無いので、単品でも購入することが出来ます。

精密ヤスリ

組ヤスリよりもヤスリ目が細かくて薄いです。
番手の表記も変わります。 #0→#3→#6 といったような数字表記になります。
数字が大きくなると細かくなるため、精密ヤスリも組ヤスリと同じく組で大きさが分かれています。

極細ヤスリ

精密ヤスリと似ていますが、その名の通り小さくて細いヤスリです。
目の表記はインチヤスリや組ヤスリと一緒です。
細かい隙間などに用いられることが多いです。

彫金で使用するヤスリの形状

彫金で使うヤスリには様々な形状があり、用途に合わせて選びます。まず形状の種類からご紹介します。
彫金で使われるヤスリの形状の種類
組数が増えれば増えるほど形状の種類が増えていきます
この表のように組数が増えれば増えるほど形状の種類も増えていきます。
用途に合わせて形状を選ぶのはもちろんですが、その中でも自分の使いやすいもの・自分に合ったものを探すのも楽しみの一つです。

彫金で使用するヤスリ目の種類

彫金で使うヤスリには粗さの他に”目”の種類というのが存在します。
特徴を知って間違ったものなどを購入しないようにしましょう。
(たんめ)は(ふくめ)の片方だけ目立てがしてあります

単目

仕上げ面が綺麗になる反面ヤスリ掛けの時に横滑りする特徴があり扱いが少し難しいです。削るというより鉋(かんな)で削いでいるような感覚が特徴でもあります。
(たんめ)を交差させているのが(ふくめ)です

複目

ジュエリー制作で最もよく使用されている目の種類がこの複目です。丈夫で万能な目なので、この目のヤスリを購入するのがオススメです。
直線ではなく円弧状の目が入っています

波目

直線の目ではなく円弧状の目が入っています。金属に対しての食い込みは甘いですが目詰まりしずらいため、主にアルミニウムなどの軟金属を削るのに適しています。
大根おろしみたいに1つ1つが山になっています

鬼目

大根おろしのように1つ1つが山になっている目です。削る量は多いのですが摩耗も早いので木材や石膏などの軟らかい素材に適しています。仕上げ面はかなり粗いです。

彫金で使用するヤスリの選択の仕方

実際に彫金の作業をしようと思った時。
たくさんあるヤスリの中からどのようにして使うヤスリを選んだらいいのか?
選ぶ際の基本的なポイントをご紹介します。
地金に対して赤いライン部分が多いとヤスリが左右にブレてしまってまっすぐに削れないのでNG

① ×

地金に対して赤いライン部分が多いとヤスリが左右にブレてしまってまっすぐに削れないのでNG

地金に対して赤いライン部分が余ってしまうと数回に分けて削らないといけないのでNG

② ×

地金に対して赤いライン部分が余ってしまうと数回に分けて削らないといけないのでNG

地金に対してヤスリの大きさが少し大きいくらいがBEST

③ ◎

地金に対してヤスリの大きさが少し大きいくらいがBESTです!

削りたいものの形状に合わせて選びましょう。

アールの内側を削るときは平ヤスリだと角が当たってしまって思うように削れないので、丸い形状(丸・半丸・腹丸・両甲丸・ハマグリ)を選ぶと綺麗に削れます。
アールの内側を削るときは平ヤスリだと角が当たってしまって思うように削れないので、丸い形状(丸・半丸・腹丸・両甲丸・ハマグリ)を選ぶと綺麗に削れます。

彫金ヤスリのお手入れ

ヤスリを使用したら必ずお手入れもしましょう!
ヤスリには必ず目というものがあります。その目と目の間に地金のカスが詰まってしまいます。
カスが詰まったままだと切削力が半減してしまいます。切削力が半減してしまうと作業効率が落ちてしまいますので、使用前や使用後は必ずお手入れをしましょう。

・真鍮ブラシなどを使ってカスを取る。 目の向きに沿って歯磨きをするようにカスを取り除きましょう。
ブラシでも取れない場合はヤスリ目に沿ってカッターや針などで地金カスを一列ずつ取りましょう。

※しばらくヤスリを使用しない場合は、ヤスリは水分を含むと錆びてしまうので、長期間使用しない場合はサビ止めや油を塗布しておきましょう!

まとめ

今回は彫金で使うヤスリについてご紹介してきました。
それぞれに特徴があり、使うものによって彫金のやりやすさが大きく変わってきます。
ポイントを押さえて自分に合ったヤスリを見つけて作業効率を上げてジュエリー制作をもっと楽しくしてもらえれば幸いです。
ヤスリは押したときにしか削れません。引いた時には削れず道具を痛めるので注意!

お手入れも忘れずに!目が詰まってしまうと切削力が半減。=作業効率半減。
以上のポイントを理解できればあなたもヤスリマスター!
技術だけではなく、道具を正しく使えれば一段上のクオリティーを目指すことが出来るので頑張って勉強してみてください!
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