ジュエリーデザイナーになりたい。と思っている人も多いと思います。
ここ数年気が付いていた事なのですが、ジュエリーデザインについて考え違いしている事に気が付きました。
ジュエリーデザインの仕事とは、形を生み出す事だけではない。という事を生徒達に伝えていませんでした。
僕はずっとモノ作りを主体において宝飾業界と関わってきました。
与えられたデザイン画を立体におこして原型として納品をする。という仕事です。
デザインを自分自身でするようになったのは、お店を出して2年ぐらいしてからです。
実はお店を開店させた当初ジュエリーデザインは一切していません。すべてデザイナーさんにお願いをしていました。
作る事は手伝えるけど、何を作ったらいいのかが分からなかったからです。
それと、僕の中でそれまで手作りでやっていたものが、どんどんジュエリーCADのソリューションに変わり始めた時期でもありました。
その当時よく聞いた話は、ジュエリーCADのソリューションを導入し、ジュエリーCADのスキルを身に付けると世界が変わる。
どんな風に?
今まではジュエリーデザイナーがデザインをし、職人が原型をつくる。2人の人間が必要でした。
それが、デザイナーか職人がどちらでもいいのですが、ジュエリーCADのスキルを身に付けると、CADの画面の中でデザインをつくり、3Dプリンターが正確に原型を作ってくれるので、CADが出来る人が一人いれば済む。
大幅な人件費などのコストカットが出来る。
大量生産の時代ではない。
小ロット多品種の時代。
個性が多様化してきているから、オーダーメイドにニーズが集まる。
CADがあれば。
お客様も喜ぶ。
売上も上がる。
さぁジュエリーCADをどんどん取り入れていきましょう!
こんな話を多くの人が聞いたと思います。今でも言っている人もいるかもしれません。
ちなみに、ほとんど本当の事だと僕は今でも思っていますが・・・
2人が1人で済む時代はやっぱりやってこないのかもしれません。
なぜ、そんな話があったかというと、ジュエリーデザインとは、形をたくさん生み出す事だ思い込んでいる人が多かったからだと思います。
デザインをするって実はかなり難しいです。
形をいろいろ変えていくだけならコンピューターは随分デザインを楽にさせてくれたと思います。だから二人が1人になるなんて話が起きたんだと思います。
でも、デザインに必要な事って形を生み出す能力だけではなく、なぜその形にするのかの根拠も一緒に生み出さなくてはいけない。という事を最近は強く感じています。
なんで、こうしたの?
なんで、ここを曲線にしたの?
なんで、ここに石を入れるの?
優秀なデザインには根拠があります。
そして、その根拠の出どころは情報収集にあるのです。
机に座っているだけじゃいいデザインは生まれません。確かにCADを使えば一日に何個もの形の指輪をデザインする事が出来るのかもしれません。
でも、それは形が違うだけです。
根拠やこだわりを語れないデザインのジュエリーを渡された販売の現場の人達はとても困ります。
販売員の人達が会社に販売してくださいと言われて売りやすい商品は、お話が出来るデザインです。語れるジュエリーなのです。
なんで?にこたえられるジュエリーはお客様に勧めやすいのです。
情報を集めて分析をしてお客のニーズにこたえられる根拠を作り上げていく事がデザイナーの仕事なんだと最近は感じています。
そして、その根拠に金属の強度や磨きの手が入るか、宝石が留められるか、重心はどこに来るのかなどの物理的な知識を加味していいジュエリーデザインは完成されます。
最近はやっぱりジュエリーCADを覚える事と、情報を集め分析し根拠を作り上げる能力はそれぞれ別の能力である事を痛感し始めました。
ワンランク上に上がる為に、僕もスタッフもステップアップする必要があります。
幸いにも応援してくれる人。力を貸してくれる人に恵まれている事もあり、毎日を大切に積み重ねられている気がします。
8月の終わりごろには、日本でも珍しいジュエリースクールの形をみんなに伝えられる気がします。