僕の毎日はまずは机のラックに入っている今日彫らなくてはいけない仕事のチェックから始まります。
そうです。僕が今現在多くの時間をかけているのは “ハワイアンジュエリーの彫り” です。
ジュエリーCADで有名になったラヴァーグですが実はハワイアンジュエリーを学びに来てくれている人もどんどん増えています。
僕自身も自分を振り返ってジュエリーCADと出会えた事は人生のターニングポイントでもあったと思います。
縁と出会いのおかげさまで、仕事もどんどん増えていき。納期に追われていた頃が懐かしいです。
たくさんのスタッフ達のお陰もあり、最近はテキストの開発などもスタッフのプロジェクトチームが行っているので、僕自身は自社の商品の原型制作と付き合いが長いお得意様の急ぎの仕事だけ今は請け負っていて、ジュエリーCADに触れている時間は少し減ってきています。
どんどん、CADが出来る優秀な人材がラヴァーグに増えている事もその理由でもあります。
逆に、手仕事の量はこちらもおかげさまで増えてきています。
僕の仕事は以前はすべてをこなしていましたが、それぞれの工程のエキスパートがいてくれるおかげもあり、僕はハワイアンジュエリーの模様を彫るという工程が主な分担になってきています。(忙しい時は磨きも石留もやっています。)
彫りの世界もジュエリーCADの世界と同じく奥が深く色々な人達います。
今でも驚きと発見が繰り返されているぐらいです。
でも、昔から僕の事を知っている人はよく何で彫りをやる事にしたの?と聞いてきます。
なぜ、そんな事を聞いてくるかというとまだ恵比寿にジュエリーCADの専門学校を作る前の目黒にいた頃にCADを触り始めていた頃には、僕は口をとんがらかせて、これからはCADの時代だ!と一生懸命言っていたらからです。
当時の宝飾業界ではジュエリーCADを本格的に教えてくれる環境も整っていなかった事と、出会う人の多くは造型機のクオリティーの低さに、CADは使えない。手作りの方がまし。と言っていた人も多かったからです。(確かに昔の造型機で出力された造形物を見た時には、このCAD目をとる事を考えたら、WAXで作った方が早い・・・。と僕も思いました。)
まだ日本にはジュエリーCADの専門学校が無い時代に、絶対にこれからはみんなCADを学ぶ時代が来る。と僕は思い込んでいました。
だから、ラヴァーグを本気で作り上げる事にしたのです。
そして、今のラヴァーグが出来上がる途中に、色々な人達がジュエリーCADを教えるビジネスに参入してきたり、それまでは見向きもしていなかった学校がジュエリーCADに力を入れ始めたりもし始めました。
ジュエリーCADを教える人達が増えると共に、未来はジュエリーCADが出来る人は他の技法以上に増えていく事を確信しました。
という事は、手作りの能力を学ぶ人は減っていってしまう。とも思ったのです。
ビジネスという視点ではジュエリーCAD一本でブランドを立ち上げて生活を支えるレベルまで持っていく事はそれほど難しくはないと言ってもいいのかもしれません。
そういう人達も増えていったので、ジュエリーCADを学ぶ人は今でも各地で増え続けています。
しかし、僕は当時ジュエリーCADのデータ作成でいただいていた金額も10分の1程度で請け負う人も出てきて、正に価格破壊が起こっていました。
CADのデータ作成だけで、成長戦略を描く事は企業としても難しいと考えてもいました。
であれば、未来はどのようなスキルの人が増えていき、減っていくのか・・・
CADで出来る事。CADでは出来ない事。
ジュエリーCADに取り組んだからこそ、見えてきた事があったのです。
それが僕にとっての “彫り” だったのです。
しかし、当時たくさんいた和彫りの職人さん達の工賃はとても適正な金額を払ってもらっているとは思えませんでした。
和彫りの技術者の工賃も既に価格破壊が起こっていたのです。
そこで、また色々な考えを練り直す事にしたのです。
そして、あるきっかけがあったのです。
それが、当時のラヴァーグに通っている生徒からハワイアンジュエリーを作りたい。とのオーダーだったのです。(目黒の小さい工房の時でした。)
当然、当時の僕は作る事も出来なかったし、作り方を教えてあげる事もできませんでした。
そこから、ハワイアンジュエリーを学ぶ事に努力をはじめました。
ここでもCADと同じように、学校や先生探しをしたのですが、当時は一切ハワイアンジュエリーを教えてくれる学校はありませんでした。
そこで、取引のあった工具屋さんの伝手をたどってハワイアンジュエリーを作っている人に出会う事がになるのですが。当然ですが、そう簡単に自分の技術を教えてくれるわけがなかったのです。
学びたい。と思い始めてから実は学び始めるのに、2年かかったのです。
そして、これも周りの人達の縁と協力のお陰で未来に必ず役立つスキルになる。と確信したハワイアンジュエリーの彫りを身に付ける努力がはじまったのでした。
今では、ジュエリーCADが出来る人はたくさんいますが、ハワイアンジュエリーを高いクオリティーで彫れる人は数が少ないです。
まぁ、僕達がどんどん教えているので、未来はどうなるかわかりません・・・
ただし、もしかしたらCADより技術の習得は難しいかもしれません。
でも、難しいからこそ価値がある能力であり続けるのかもしれません。
CADを学んだ人には、CADを学んだ人だからこそ分かる、CADでは出来ない事を始めてみる事を僕はお勧めします。