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カンカン・トントン・コンコンコン。ジュエリーCADスクールに必要な音とは。

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さて、今日はうちの通信教育でジュエリーCADコースを受講してくれた人が遊びに来てくれた時の話です。

彼女の家はちょっと恵比寿に通う事が難しい県にあります。でも、たまたま東京に来る用事があったので恵比寿に顔を出してくれました。

もうLessonは終わっているので、自分の思っているものが出来るようになってきて、パソコンの前に座っているのが楽しくなってきました。と言ってくれたのが顔を見る事が出来ない通信講座の生徒さんのほっとする一言でもありました。

ただ、やっぱり悩みがあるそうです。

それは、パソコンの画面だけでいくらCADが出来るようになっても、画面の中では成立しても、なかなか製品にする事ができない。

という悩みでした。

どういう事かというと。

問題1 CADで上手く描けた。と思っても3Dプリンターでお金をかけて出力してみたら、思っていたものと違っていた。

この問題は現場で仕事をしている人もよくある話です。実物は数㎜なのに、パソコンのモニターは30cm以上あります。何倍にも拡大してジュエリーCADはモデリングします。ので、太いと思っていたものがとっても細くなってしまったり、曲がっていると思っていたものがほとんどまっすぐになってしまったり。とモニターと実物のギャップに苦労するのです。だから、造型機を用意しないとこのギャップを体感させてあげる事が出来ないので、3Dプリンターを学校内に用意しているジュエリーCADスクールが増えてきているのです。

しかし、3Dプリンターがあれば良いのか。と言うとそうではありません。

多くのジュエリーメーカーが複数台の3Dプリンターを所持している理由とは。

一言で3Dプリンターと言っても、色々な種類があるのです。

インクジェット造形方式、光造形方式、金属切削方式、WAX切削方式、FDM方式などなどです。

なぜ、ジュエリーメーカーが複数台の3Dプリンターを所有するのかというと、それぞれのプリンターには得意な形状と不得意な形状があり、高額な3Dプリンターでも出来ないクオリティーが低価格(100万円前後)のプリンターだと綺麗に出来る形状もあるのです。もちろんその逆もあります。

また、全てをジュエリーCADのソリューションで作り上げる事も難しく、手作りを始めプレスやワイヤーカットなど色々な知識や設備を駆使してみんなが何気なく手に取っているアクセサリーやジュエリーは作り上げられているのです。

実はジュエリーCADを学ぶという事は、あくまでもジュエリーを製作する過程でのひとつの手段を学ぶという事なのです。

自分が思い描いているデザインはどのような方式をもちいて製作するのが楽で綺麗なジュエリーが出来るのかを知り、適切な選択が出来るようにならなくてはいけないのです。

ラヴァーグではそれを体感してもらいたいと思っているので、各種3Dプリンターを、トップブランドと同じ様に用意しているのですが、これでも、まだまだ足りない事があるのです。

3Dプリンターの種類によって後処理がぜんぜん違ってくる。

 

これも、プロとして活躍している人なら分かる事なのですが、造形方法によって造形物の後処理が変わってきます。例えば、光造型などはサポートという支えが付くので、これを綺麗に取る為には少し技術が必要だったりします。また、CAD目と言われている地層のようなスジを取る事も必要になってきます。(キャド目がほとんど出ない造型機も出てきていますが、寸法制度を見越したデータ作りが必要だったりします。)

フルエタニティーリングなどサポートをつける事が出来ない形状はインクジェット造型機が向いているのですが、インクジェットの造形物はもろいので、慎重に扱うテクニックと、造形する時にも少し工夫をしておいた方が良い場合があるのですが、造形サービスビューローの仕事は頂いたデータをそのまま造形する事が仕事なので、持ち手を付けておくと後加工が楽になる。心金に入れて叩くのであれば、ここはつなげておいた方が良い。などなどを考えた造形用のデータ作りも知識と経験が必要になってくるのです。

ここに金属切削機などの知識が加わってきます。鋳造(キャスト)では表現できないけど地金だと上手くいく。というデザインなどには向いているのですが、刃物やCAMの問題もあって、これもまた、そのままのデータではなく造形用の工夫をしたデータ作りを必要とする部分があるのです。

光造形・インクジェット・金属切削機など、CAD目を取るのにもそれぞれの取り方があったりします。

しつこいようですが、みんなが何となく手に取っているアクセサリーやジュエリーはそんな工夫の末に出来上がっているのです。

問題2 やっぱりジュエリーCADを学ぶ為には工房は必要です。

工房を造るというのは実はとても費用がかかります。ジュエリーメイキングをトップレベルで作る為にはとても多くの設備を必要とします。ジュエリーCADだけを教えるよりもとても広い場所が必要になってきます。もちろん家賃などの固定費もおおきくなってしまいます。

 

でも必要なんです。

 

工房がなぜ必要なのかというと、多くのジュエリーCADを教えている人達の実績やキャリアを見てみれば分かると思います。

ほとんどの先生たちは、手作りの実績を明記しています。だからCADができるのだ。と・・・。

そのとおりだと思います。

やっぱりジュエリーCADだけ学んでいても使い物にはならないのです。

ほとんどの先生達は、CADの歴史よりも手作りの歴史の方が長い人がほとんどです。そしてその重要性を説いています。

そして、ジュエリーCADの先生の多くは沢山の造形や沢山のCADの実績を経験して先生になっているはずです。

最初から先生になろうと思っていた人は少ないように思います。つくって、失敗して、身についたんです。

 

だから、やっぱりジュエリーCADのスキルと手作りのスキルの両方を学ばなくてはいけない。という事なのです。

この2つを学ぶ環境を用意する事は少し大変です。

 

僕らもジュエリーCADを教える前に目黒で6年間手作りの技術を教える設備と経験を整えてから、10年前に正確に言うとその1年前ぐらいから準備を開始して、日本で初めてジュエリーCADを専門的に教える学校として恵比寿に開校しました。

さっき、3Dプリンターが5台あると書きましたが、最初から5台はもちろんありませんでした。(最初は小さなWAX切削機1台でした。)

10年かかって、設備を整えてきたのです。

そして、10年やってきたからこそわかる事があります。

ジュエリーCADを学んでいる人達のほとんど全ての人が、学校では音を出します。

 

カンカン・コンコン・トントントン  と・・・(もちろんキーボードを押す音も出しますが。)

 

この音がしてくると、ジュエリーが出来上がりに近づいてきている証拠の音でもあります。

 

通信講座で頑張ってくれた子の話に戻りますが。やっぱり、本当に作らないと学べない。と言っていました。もちろん日本全国には彫金教室がたくさんあります。

カンカン・トントンに囲まれている人は、囲まれながら通信講座で学ぶ事ができますが、やっぱり先生にお願いして学校にCADの設備を少しずつでも良いので入れてもらうお願いをしてみるのも良いかもしれません。

繰り返しますが、3Dプリンターで出力しないと分からない事もあるし、綺麗に鋳造したりゴム型を取る為にはある程度の造形物の処理をしなくてはいけないし、最後にやっぱり磨いたり石を留めたりしなくては残さなくてはいけない地金の厚さや磨いていく時の減り方などを学ばなくてはいけないんです。

 

ずいぶん長くなってしまいましたが、もう少し次回に続きを書いていきたいと思います。

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