という事で、その後のお問い合わせも多かったので、今回の松尾塾のポイントをもう少し書いてみようと思います。
まず、ひとつ目のポイントはスタート地点を変える。
という事です。
既存のジュエリースクールや彫金教室のカリキュラムの生み出され方をほんの少し書いてみます。
全てではないと思いますが、大きなところであればある程、“就職率”という所をセールスポイントにおいているし、おこうとしています。
しかも、大手に就職させる事ができる。
というのも強く打ち出しています。
当然、お金を出す親の視点からすると大切なポイントである事は間違いないと思われます。
その為、大手ジュエリーブランドや有名な所に就職しやすい人材を育成していくプログラムを頑張って作り上げていきます。
そのプログラムから生み出される人材とはどのような人材なのか・・・
一言で言うとスペシャリストです。
大手ジュエリーブランドやメーカーはジュエリーメイキングのスペシャリストを求めているのです。
それでは大きければ大きいほどどんな過程でモノ作りが進んでいくかを書いてみます。
①まずは、予算(お金)・・・が最初に来ます。いい企画やセールスプロモーションを考えてもお金がないと実行できないからです。
②販路の確認・・・すでに持っている販路のターゲットにあったものを提案しなくてはいけないのは当然です。販路がない場合や、新企画の場合は営業部隊が販路の新規開拓を行います。
③市場調査(マーケティング)・・・予算の確認と販路の確認なくしてマーケティングは実行できません。自分達が実行できる範囲で調べていく事が大切だからです。
④企画・・・予算・販路・マーケティングを踏まえてシーズン毎の企画やクリスマスなどの企画をたてていきます。
⑤セールスプロモーション戦略を練る・・・いい企画をどのようにマーケットに伝えていくかを考えます。もちろん繰り返しますが予算の範囲内のセールスプロモーションです。ここで、プロモーションに起用するタレントなどが決まってくるのです。
⑥デザイン・・・予算・販路・マーケティング・プロモーション戦略・タレントなどの情報を元に、販売価格帯を考えながらデザイナーがデザインをあげていきます。
ここまで決まってから自社生産をしているブランドはモノづくりに突入していきます。
⑦サンプルアップ・・・このサンプルアップは重要です。
デザイナーの意図をくみ上げ、販売価格を考慮し許される原価の中でのモノづくりが開始されます。
許される原価が決まっているので、本当はばらばらにつくって仕上げてから組み上げた方が美しいものができるのに、一体成型でつくって手が入らない所はホーニングやいぶしたりしよう。
量産していく為の強度を考えた原型づくりをしよう。
いかに量産しやすく、いかに原価を少しでも減らしながら、クオリティが高いものを作り上げる事ができるかが、モノづくりのスペシャリストの知識や経験の見せどころです。
よく、いろいろなブランドのクオリティについて話をする人もいるとは思いますが・・・
綺麗につくれないのではなく、コストをふまえた仕上げのレベルで止めているのです。
そのような色々な縛りがある中で、いかに正確に、いかに早く、いかにコストパフォーマンスが高い製品をつくる事ができるのかが、モノづくりのスペシャリスト達には求められてきたのです。
だから、就職率を上げる為に、おもにモノづくりのスペシャリストを養成する為のプログラムが組まれているのです。
ここで気をつけなくていけないのは、それが悪いという話ではなく、当然の事であったし、それが求められていたのです。
しかし、現在の状況はどうでしょうか。
企画やデザインは日本人の空気感をつかみながらしていかなくてはいけないので、海外に流出する事はありませんが・・・
ただ、モノを作るというスペシャリストの能力は人件費が安いアジア各国に移動し始めているのが現状です。
職人。
僕も1人の職人としてモノづくりを毎日している傍ら、それだけでは足りないという事をお店をオープンさせてから7年間。常に感じてきました。
昔はそれでよかったのかもしれません。
でも、今は足りないのです。
アジア各国の職人たちの知識や経験はもうそんなに低い所にあるわけではないからです。
今まではモノづくりのスペシャリスト達が、このままではいけないという事に気がつきいろいろな活動を開始している人や企業も多く見かけます。
しかし、モノづくりしか学んできていない学生達を見ていてよく似ている事があったりします。
モノづくりが大好きで、自分自身の“かっこいい”“かわいい”“センスある”から生み出された商品を何とかして売ろう・・・
この出来あがった商品を売っていきたい。
これを売る為にはどうしたらいいと思いますか?
などの質問をされる事がある。
もう出来あがったものをそこから理由や理屈を付けて売る事はじつはとても難しい。
モノづくりが全てであったプログラムから生み出されるロジックは間違っていないけど・・・上に記載している⑦からスタートしてしまってはいけない。
個人でも企業でも、まずは使える予算を先に決める。
その予算の中にはモノづくりの予算だけでなく、セールスプロモーションの予算もしっかりと考慮する。
そして、販路の確認をしっかりする。
たぶん、最初はお金が少ないはずなので、いろいろな販売会やセレクトショップにおいてもらったとしても。友人知人が多くかけつけてくれるはずだ。
だから、販路は自分の友人知人を起点にした広がりを見据えたうえでの企画をしていくべきだ。
予算を常に確認する。
予算がないなりの戦略は必ずある。
販路がないなりの戦略もある。
僕自身がそうだった。
まずは、自分自身のブランディングをしっかりしていってもらいたい。
かっこいいブランド名などはもっともっとずっと後でもいいはずだ。
どんなにかっこが良くても、予算がなくては広告がうてない。
広告がうてなくては、かっこいいブランド名を伝える事はできない。
ブランドが秘めているコンセプトや意味すら伝える事もできない。
今の時代ホームページがある。
という人もいるが・・・
そのホームページすらいいものをつくっても、広告予算がなくては友人知人しか訪れてくれない。
ホームページに人を呼び込むのも大きなお金が必要なのだ。
長くなってきたので今日はこれくらい。